マクラーレンは2026年F1マイアミGPにおいて、スプリントでポールポジションと1-2フィニッシュを達成しながら、決勝グリッドを決める予選では勢いを失った。ランド・ノリスは4番手、オスカー・ピアストリも後退し、わずか24時間でパフォーマンスが低下した点が大きな焦点となっている。特に異様だったのは、ライバル勢がスプリント予選から本予選にかけてコンマ3〜5秒改善したのに対し、マクラーレンは逆に同程度タイムを落としたことだ。この“逆行”が、単なるセットアップ変更では説明できない問題を浮き彫りにしている。
エネルギー展開の優位性が消えた理由マクラーレンはスプリント予選で、ターン3〜4間でエネルギーを多く使う独自のデプロイ戦略によって優位性を確保していた。一方、メルセデスやレッドブルはストレート重視の配分を採用していたが、これが十分な効果を発揮していなかった。しかし土曜日になると各チームがマクラーレン寄りの戦略に収束し、優位性は消失。ラップタイム差は自然と縮まった。ただし、これだけではマクラーレンの“失速”は説明できない。PU特有の“相互干渉”が招いたパフォーマンス低下チーム代表アンドレア・ステラは、問題の本質が単なるエネルギー配分ではないことを示唆している。「重要なのはどこでエネルギーを使うかだけではない。その使い方が、例えばパーシャルスロットル時の挙動など、他の要素とどう相互作用するかだ」「クラシックな“どこで使うか”の話ではなく、電気系と内燃エンジンの挙動が密接に絡み合っている」つまり現在のパワーユニットでは、電気エネルギーの使い方が内燃エンジンの挙動と複雑にリンクしており、わずかな変更が予期せぬ副作用を引き起こす構造になっている。外的要因が引き起こす“連鎖的なズレ”この繊細さは、外部環境にも強く影響される。例えば向かい風が強まるとストレートでのエネルギー消費が増え、バッテリー残量や回収ロジックにズレが生じる。その補正を試みる制御がさらに別のズレを生み、最終的に最適なエネルギー運用から外れてしまう。ステラは「最適化は非常に難しい」と語り、この“連鎖的なズレ”が今回のパフォーマンス低下に影響した可能性を示唆した。準備ラップとバッテリー管理の難しさマイアミではロングストレートの影響で、アタックラップ前のバッテリー充電も極めて重要となる。ドライバーはスロットル開度を60%未満に抑えながらエネルギー消費を防ぎつつ、回生量の上限にも気を配る必要がある。この“準備工程”が少しでも狂えば、アタックラップ開始時点でフルデプロイができない。ノリスはこう振り返っている。「最終アタックで、なぜかフルデプロイにならなかった。最初からうまくいかなくて、それで終わりだった」同様にピアストリも、デプロイ変更によって想定外の“スーパークリップ”が発生したと明かしている。「いくつか変更を試したが、思ったように機能しなかった。1つ変えると別の問題にぶつかる」“ランダム性”が支配する現在のF1今回のマクラーレン失速とレッドブルの浮上は、現在のF1が極めて高い“感度”を持つ競技であることを象徴している。ピアストリは次のように語った。「今は、誰がうまくやるか、誰が失敗するかで結果が大きく変わる。僕たちは今回はうまくいかなかった側だった」「しかも差はコンマ1や2じゃなく、時にはコンマ5秒になる」わずかなエネルギー管理の違いが、大きなタイム差として現れる。この特性についてステラは「これほどの敏感さはF1の歴史でも経験がないレベルだ」と述べている。マクラーレンの失速は単なるセットアップミスではなく、現代F1のパワーユニットが持つ構造的な“複雑さ”が表面化した結果だ。今回のケースは、その難しさと不確実性を最も端的に示した一例と言える。