マクラーレンが2025年F1ラスベガスGP決勝中に発した無線は、チームがダブル失格につながった問題をどのように抑え込もうとしたのかを示している。ランド・ノリスとオスカー・ピアストリは、マシン下面のプランクの過度な摩耗によって失格となった。レース中にこれを避ける最善策は、最もダメージが発生しやすい区間でペースを落とすことだった。彼らはこれを試みたが、2台とも成功には至らなかった。
ライバルに悟られないよう“直接的な言及”を避けた無線ノリスとピアストリのレースエンジニアは、プランクに関する懸念を直接伝えることはなかった。これはライバルに問題を悟らせないためだったと思われる。この点において、マクラーレンは一定の成功を収めた。レース終盤にノリスが急激にペースを落とし、初めて問題が露わになった際でさえ、レッドブルはマックス・フェルスタッペンに「何か問題があるようだ」としか伝えていなかった。しかし、FIAの失格説明文書と両ドライバーが受け取った無線を照合すると、マクラーレンが3つの特定コーナーでプランクへのダメージを抑えようとしていたことが見えてくる。その3か所とは 5コーナー、11コーナー、17コーナー である。ノリスはこれら3つについて最も多くの指示を受け、ピアストリも特に5コーナーと11コーナーについて頻繁にペース管理を求められていた。17コーナーは少なかったが、ピアストリはレース中盤に「17コーナーでもリフトし続けるべき?」と確認しており、継続的に実施していたことがうかがえる。3つのコーナーが“危険地帯”だった理由ピアストリは5コーナーについて「バンプがあるためリフト&コーストが必要」と念押しされていた。マクラーレンのマシンはレース中、この区間で激しくスパークしていた。11コーナーと17コーナーはコース上で最も高速の左コーナーであり、左コーナーでは右側のプランクがより摩耗しやすい。実際、マクラーレンのプランクの違反箇所は右側に集中していた。ノリスのプランクは右側前方で0.12mm、右側後方で0.07mm不足していた。ピアストリは同じ箇所で0.26mmと0.1mm不足しており、さらに左前部でも0.04mmの不足が確認されていた。タイヤ管理、燃料節約、オーバーヒート対策などの理由でチームがペース調整を指示するのは珍しくない。しかし、マクラーレンが特定の3コーナーに集中して警告したという事実は、プランク問題との関連性を明確に示している。FP2赤旗や雨が“兆候を隠した”とマクラーレンは説明マクラーレンは、FP2が赤旗で中断され、金曜走行が雨に見舞われたため、摩耗の兆候を事前に把握できなかったと説明した。雨天ではコーナリングスピードが低下するため、プランク摩耗も小さくなる。また、初日の走行後にピレリがタイヤ内圧を変更したことで状況がさらに複雑化した。もちろん、こうした要因はいずれも、他9チームが避けられた問題をマクラーレンが犯してしまったことを免罪するものではない。マクラーレンは「レース中に問題を発見した」と述べているが、実際にはレース前のインスタレーションラップの時点で初期兆候を掴んでいた可能性が高い。中盤に発見してドライバーに初めて知らせた形跡はない。レース終盤のノリスの失速は燃料ではなく“プランク保護”だったノリスがレース終盤に大幅にペースを落としたことで、燃料不足説が浮上した。実際に燃料に関する無線も1回あったが、失格理由が判明した今となっては、それはチームの“偽装”だったことが分かる。ノリスが「やるべきことを全部教えて」と尋ねた後、急速にペースを落とし始めたことは決定的だ。ノリスは フェルスタッペン追撃が不可能であると判断し、後方との大差を利用してプランク摩耗抑制を優先した と見られる。しかしそれでも失格を避けるには至らなかった。ノリスとピアストリが受け取った無線Lap 5/50 NOR: 1’36.965 PIA: 1’37.624ジョセフ「そして、6コーナー、11コーナーで少し多めにリフトしてほしい」Lap 6/50 NOR: 1’36.777 PIA: 1’37.098ジョセフ「そして、3コーナーでペースのチャンスがある」スタラード「後ろはルクレール。可能なら10コーナーで早めに深いリフトを提案する」スタラード「何か変化があれば教えて」ピアストリ「いや、今は問題なく感じるよ」Lap 7/50 NOR: 1’36.777 PIA: 1’37.098スタラード「5コーナー良くなったよ、オスカー。今のラップの5コーナーは良かった。ブレーキを使いたいことを覚えておいて」Lap 8/50 NOR: 1’36.966 PIA: 1’36.741ジョセフ「ランド、ストラット7にして。ストラット7。理想としては17コーナー、5コーナー、12コーナーで少しリフトを入れてほしい」Lap 11/50 NOR: 1’36.345 PIA: 1’36.705ノリス「うーん、フロントが少し悪くなってきてる。それが心配なところだ」Lap 12/50 NOR: 1’36.264 PIA: 1’38.447ジョセフ「ランド、今はフェルスタッペンとほぼ同じ状況だと思う。ラッセルのほうがわずかに良いけど、ほんの少しだ」ノリス「フロントかリア?」ジョセフ「フロントだ」Lap 13/50 NOR: 1’36.298 PIA: 1’37.290ジョセフ「ランド、今は君が最速だ。できれば17、5、12コーナーで少し大きめのリフトを」Lap 14/50 NOR: 1’35.962 PIA: 1’37.579ジョセフ「ランド、今は“プランB+5”を考えてる。“プランB+5”だ」ノリス「了解」ジョセフ「11コーナーでのリフト量は良い。もう少し早めにリフトを入れて」Lap 18/50 NOR: 1’35.591 PIA: 1’36.282ジョセフ「これはチャンスだ。ペースを上げよう」スタラード「オレンジ・トルク1を提案する。オレンジ・トルク1。オスカー、可能なら5コーナーでリフト&コースト、5でリフト&コースト。それから11のディフ」ノリス「うん、やってるよ。クリーンエアは段違いにいいから……」ジョセフ「了解、そのままステイアウトで」ノリス「了解」Lap 19/50 NOR: 1’35.769 PIA: 1’36.426スタラード「ルクレールと同じ、サインツは36.7」スタラード「オスカー、リフト&コーストで、5コーナーのブレーキングにチャンスがある」Lap 20/50 NOR: 1’35.680 PIA: 1’36.707ジョセフ「ランド、17、5、12でまたリフトが必要だ」Lap 21/50 NOR: 1’36.320 PIA: 1’40.682ノリス「うん、ペースは落ちるよ」ノリス「フロントがもう少し悪くなってきてる」ジョセフ「了解」Lap 22/50 NOR: 1’41.141 PIA: 1’51.292ノリス「了解」Lap 23/50 NOR: 1’51.904 PIA: 1’35.921ノリス「2つだけ教えてほしい。今は自分のレースをしてるの? それとも前に行くレースなの?」ジョセフ「ランド、みんな“プランB”にしてい...