マクラーレンF1チームは、ランド・ノリスが使用している新しいフロントサスペンションの構成をオスカー・ピアストリにも導入すべきかどうかを検討している。6月中旬のカナダGP以降、マクラーレンの2台はフロントサスペンションのジオメトリーが異なっており、ノリスは最新仕様を採用。一方でピアストリは、シーズン開幕時からの構成を継続している。
新しいサスペンションは、主にフロントアップライトの取り付けポイントが見直されており、ドライバーがコーナリング中にステアリングを通じてクルマの挙動をより繊細に感じ取れるようにすることを目的としている。これは、今季序盤に両ドライバーが感じていた“ステアリングからの情報が希薄”という「無感覚(numbness)」への対応策だ。ノリスはこの感覚により悩まされていたため変更を受け入れたが、ピアストリは従来仕様に不満を感じておらず、現状維持を選んでいる。マクラーレンはこのサスペンションの違いについて「アップグレードというよりセットアップの選択肢」と位置づけているが、実際には2種類の仕様を並行運用することによる部品管理上の複雑さが生じている。そのため、チーム代表のアンドレア・ステラはピアストリにもノリス仕様の一部を採用させる可能性に言及した。「この違いによってパフォーマンス比較やドライビング評価に問題が出ることはない」とステラは語る。「ただし、部品管理という観点では、異なる仕様を常に持ち運ぶ必要があるため非効率だ。ランドが採用している仕様の一部をオスカーが使う可能性について、現在検討しているところだ」ピアストリはこの「代替ジオメトリー」について、パフォーマンス面で明確な優位性があるとは考えておらず、現時点では導入に積極的ではない。イギリスGP前に次のように述べている。「僕はまだこの仕様を使ったことがない。これは“アップグレード”ではなく、“違うだけ”のものだ。いい点もあれば悪い点もある。もし全てが改善されるのなら迷わず取り付ける。でも僕自身はその“感覚”に悩まされていない。シーズンも順調だし、今はこの仕様で安定性を保ち、他のアップグレードとセットアップ最適化に集中したいと思っている」ステラもその姿勢を尊重しており、「ランドには明確な効果があったが、オスカーは現仕様に高い満足度を示している。この違いは今季残りの期間中も続く可能性がある」と認めている。一方、ノリス本人はサスペンション変更による恩恵は「過大評価されている」との考えを示した。「正直言って、人々はこれを話題にしすぎだと思う。確かに影響はあるかもしれないが、あったとしてもコンマ0秒台の差。僕がここ2戦で勝てたのは、このサスペンションだけの成果じゃない。トラック外での努力やチームとの連携の成果が大きい」「それに、前の仕様に戻っても同じ結果が得られたかもしれないとも思っている」マクラーレンは今後も、各ドライバーにとって最適なフィーリングを引き出せる仕様の選択を尊重しつつ、パフォーマンスと運用効率のバランスを取る方針だ。