F1は2018年シーズンから“グリッドガール”の廃止を決定。そのニュースを受けて、日本の“レースクイーン”を巡って論争が巻き起こっている。F1では各国の美女たちがドライバーのネームボードを持ってグリッドに花を添えてきたが、近年では“グリッドガール”が女性蔑視を助長するとして廃止を求める声が高まっていた。
すでにFIA 世界耐久選手権(WEC)ではグリッドガールを廃止しており、F1でも2015年のF1モナコGPで“グリッドボーイ”を登場されるなど、試行錯誤がなされていた。F1のオーナーであるリバティメディアは31日(水)に声明を発表。露出度の高い衣装を着た女性がレース前にスタート地点付近を歩き回る慣習は“現代の社会規範にそぐわない”と述べた。女子スポーツを振興する草の根活動『Women's Sport Trust』は、今回のF1の決定に「グリッドガールの起用を廃止するというF1の決定に感謝します。他のスポーツも彼らが何をしたいのかについて明確な選択をすることになるでしょう」と賛同のコメントを寄せている。昨今、海外では、エンターテイメント業界や政界でのセクハラを告発する「#MeToo」運動が巻き起こり、スポーツ界でも問題になっている。今月にはダーツ競技で試合開始前に選手と一緒に歩く女性の廃止が決まっている。今回のF1の決定により、ボクシングの“ラウンドガール”など他のイベントの主催者にも廃止に向けた圧力がかかると予想されている。このニュースは日本にも飛び火。新聞社などが今回のF1のグリッドガール廃止を“レースクイーン廃止”と表現したことで注目を集めている。F1でのグリッドガールは、モデルや女優のような華やかなイメージを演出しようとしているのに対し、日本ではどちらかと言えばアイドルに近い存在で“レースクイーン”という独自の文化が育っている。日本のSUPER GTやスーパーフォーミュラといったレースシリーズでは、チームが“レースクイーン”を採用し、企業のキャンペーンガールの役割もかねて集客に大きく貢献している。モータースポーツ専門誌も各チームのレースクイーンを特集し、サーキットにもレース観戦だけでなく、お気に入りのレースクイーンと会い、写真を撮るために訪れるファンもたくさんいる。レースクイーンで人気を集め、女優や芸能人としての地位を確立した女性も多い。日本でも特にテレビ放送を中心に“差別”や“蔑視”といった考え方に意識が向いている。今回の女性蔑視という観点とは異なるが、とんねるずの石橋貴明が扮するキャラクター「保毛尾田保毛男」やダウンタウンの浜田雅功が黒塗りメイクで番組に出演したことで多くの議論を呼んだ。今回の報道を受けて、日本の“レースクイーン”についてもTwitterでトレンドワードに入るなど、様々な意見がソーシャルメディアを通じて発せられている。「そもそも自動車のレースと何の関係もない」「レーサーになりたい女性には“女は添え物”的なセンスは弊害かもしれない」「レースクイーン廃止にするくらいなら車の展示会とかのコンパニオンを先にどうにかして欲しい。カメラ小僧でよく見えない」と言ったF1の決定を肯定する意見や「女性軽視とは思わない。最近、差別に敏感な人多すぎない?」「女性蔑視で駄目なんだったら男性配置すれば?」「女性の人生選択肢を潰している」「女性蔑視だと抗議した人達が仕事与えてあげられるのか?」「レースクイーンで頑張ってきた女性たちの考えや存在を全否定するようなもの」「本人は自分の仕事に誇りを持っている。女性蔑視なんて思っていない」と否定する声も多い。日本ではレースクイーン廃止について議論がなされているとの報道はないが、今回のモータースポーツの頂点であるF1の決定を日本のレースシリーズのプロモーターや自動車メーカー、チームをスポンサードする企業がどのように受け止めるかが注目を集めることになるだろう。