レッドブルF1が2026年のドライバー体制発表を先送りにしている。その背景には、リアム・ローソンの去就判断をめぐってチーム内部の意見が割れていること、そして長年チームの人事に強い影響を及ぼしてきたヘルムート・マルコの発言力が低下している現状があるとされる。チーム代表ローラン・メキースをはじめ、経営側の判断プロセスが強まりつつある中で、マルコの主導で進められてきたドライバー選抜体制は変化を迎えている。
レッドブルはローソンを含む4人のドライバー構成を年内に決定する見通しだが、発表の遅れがその“権力構造の変化”を象徴している。ブランドル「ハジャー昇格は時期尚早」元F1ドライバーで現在解説者のマーティン・ブランドルは、「理想的にはアイザック・ハジャーをまだ昇格させるべきではない」と指摘している。ブランドルは「2026年の新レギュレーションでは経験値がこれまで以上に重要になる。ハジャーにはまだその蓄積が足りない」と語り、ルーキーにとって未知のマシン環境を理由に慎重な判断を促した。こうした見方は、メキース体制下のレッドブルでも共有されているとみられ、チームとしても若手育成と結果重視の間で板挟みの状態にある。角田裕毅の発表を遅らせる“経済的理由”報道によると、レッドブルは角田裕毅のシート喪失をこの段階で発表することで約3,800万ポンド(約74億円)もの損失リスクを懸念しているという。シーズン終盤のコンストラクターズ選手権2位争いを控える中、仮に「来季不在」が明らかになった角田が成績を落とした場合、チーム全体の評価やスポンサー収益に悪影響を及ぼす可能性がある。そのため、チームは最終決定をアブダビGP後まで保留する方針とみられる。こうした“沈黙”もまた、従来のマルコ主導による即断型の人事とは対照的だ。「マルコが全てを決める時代は終わった」オランダ人記者エリク・ファン・ハーレンは、「マルコが単独で決断する時代は終わった」と明言。「マルコはこれまで、メキシコGPの後に翌年の4人のドライバーを発表する、と何度も言ってきた。だが今では、それは11月末か12月初旬、アブダビでの最終戦後になるだろう」と指摘した。ファン・ハーレンによれば、マルコが理想とする構成は■レッドブル・レーシング:マックス・フェルスタッペン/アイザック・ハジャー■レーシングブルズ:角田裕毅またはリアム・ローソン/アービッド・リンドブラッドという明確な図式だが、最終決定権はもはや彼一人にないという。メキースやオリバー・ミンツラフを含む経営陣が“チーム運営の新時代”を形成している。ローソンの正念場 残留の鍵は“結果”リアム・ローソンは今季、F1で最多リタイア数を記録しており、前戦メキシコGPでも序盤でリタイア。過去6戦で入賞できたのはわずか1回にとどまっている。チーム内では「残り数戦で2〜3回はポイントを獲得しなければ厳しい」とする見方も出ており、今後のレースがF1キャリア継続を左右する分岐点になる。ローソンには十分なスピードがあると評価されているが、結果でそれを裏付けなければ昇格も残留も厳しくなる。メキース体制のもとでは、「潜在力より実績」を重視する姿勢が一層強まっているからだ。レッドブルF1の“決断遅延”が示す組織変化今回の決断先送りは、単なる人選の迷いではなく、チーム内の権力構造が変化している兆候でもある。長年にわたり若手発掘と昇格を一手に担ってきたヘルムート・マルコの役割は縮小し、経営側の戦略判断が優先される新体制へと移行しつつある。ローソン、角田、ハジャー、リンドブラッド──。彼ら4人の行方をめぐる最終判断は、レッドブルが“マルコ時代”から“組織主導時代”へと転換する試金石となるだろう。Source: F1 OVERWSTEER
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