2026年F1日本GPの予選に向けて、充電制限の変更(8MJ)が導入されたことで状況は一定の改善を見せた。しかし、鈴鹿サーキットにおける1周の中で、依然として看過できない問題が残っている。最大の問題は、電力不足によってストレートでフルパワーを維持できず、「スーパークリッピング」が発生することだ。その結果、ドライバーがアクセル全開のままにもかかわらず速度が大きく低下する現象が起きている。
特に顕著なのが130Rから最終シケインにかけてで、ブレーキング前にもかかわらず最大で50km/hもの速度低下が確認されている。“全開区間”が失われた鈴鹿の象徴的コーナールイス・ハミルトンはこの現象について次のように語っている。「スーパークリッピングが必要になるのは良くない。パワーがない状態でコースの一部に入っていくことになるから、今回のレギュレーション変更で一番楽しくない部分だ」ハミルトンは控えめに表現しているが、実際には“最も悪い変化”と言える。130Rは近年フルスロットルで通過可能なコーナーではあったが、本来は高速コーナーとしての迫力と緊張感を持つセクションだった。しかし現在は、シケインに向けて長く“惰性で減速する区間”となっており、観る側にとっても違和感のある光景となっている。ドライビングの質は変わったが“楽しさ”は残るオリバー・ベアマンはこの変化について次のように述べている。「以前は全開だったコーナーがそうではなくなっているのは事実だけど、これが今の現実だ。それでも最大限を引き出す技術は必要だと思う」「簡単ではないけど、こういうサーキットで走るのはやっぱり楽しい」ドライバーにとっては依然として挑戦的である一方、従来の“限界領域での戦い”とは異なる性質へと変化している。改善されたが依然として大きい速度低下充電制限が9MJから8MJへ変更されたことで、エネルギーセーブの度合いは緩和され、スーパークリッピングの頻度は抑えられた。カルロス・サインツJr.は次のように説明する。「シミュレーターで想定していたよりは良くなったし、スーパークリッピングもコントロールされている」「でも130Rやスプーン、デグナーでの速度低下はまだ大きすぎると思う」さらに、ジョージ・ラッセルもこの変更を支持しつつ、さらなる調整の余地を指摘する。「正しい方向の変更だったと思う。もっと踏み込んでもよかったかもしれない」電力の使用量をさらに制限すればラップタイムは遅くなるが、速度の落ち方はより自然になり、違和感は軽減される可能性がある。“ゼロキロワットゾーン”が生む新たな問題問題はスーパークリッピングだけではない。鈴鹿のS字やデグナー、スプーンなどの区間では、MGU-K(電動出力)が完全にカットされる「ゼロキロワットゾーン」が設定されている。これにより、これらのコーナーでは内燃エンジンのみで走行することになり、実質的にパワーの約半分しか使えない状態となる。サインツはこの状況について厳しく評価する。「以前ほど良くはない。F1が目指すべきものではないと思う」この影響は特にセクター1で顕著で、本来は高速かつ流れるようなリズムが魅力の区間が、明らかに“遅く穏やかな走行”に変わってしまっている。鈴鹿の本質が“グリップ勝負”から“エネルギー管理”へ本来、鈴鹿はグリップ限界で攻めるサーキットだった。しかし2026年仕様では、多くのコーナーが「パワー制限」によって成立するものへと変化している。ピエール・ガスリーが語るように、デグナー1のようなコーナーは依然として精度が求められるが、その挑戦の質は変わっている。結果として、ドライバーは限界のグリップではなく、エネルギー配分と出力制御の中でラップを構築する必要がある。鈴鹿は依然として素晴らしいサーキットであり続けている。しかし2026年のF1マシンは、その魅力の一部――特に“全開で挑む高速セクション”という核心――を確実に削ぎ落としてしまった。
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