F1アゼルバイジャンGPの決勝は、さまざまなドラマの巻き起こる波乱の展開になった。それでも、レッドブル・レーシング・ホンダのセルジオ・ペレスが今季初優勝を果たし、スクーデリア・アルファタウリ・ホンダのピエール・ガスリーが3位表彰台を獲得。ホンダF1パワーユニットはダブル表彰台に加え、モナコGPに続き1992年以来の連勝を果たした。
スターティンググリッドではマックス・フェルスタッペンが3番手、ガスリーが4番手と2列目につけ、ペレスが6番手、角田裕毅が7番手と、全車が上位からレースを開始したホンダF1パワーユニット勢。オープニングラップではフェルスタッペンが3番手を堅持し、ペレスは2つポジションを上げて4番手となる。前方のシャルル・ルクレールを、2周目にフェルスタッペンが、3周目にペレスがオーバーテイクし、レッドブル・レーシング・ホンダは2-3番手でレースを進める。スクーデリア・アルファタウリ・ホンダ勢は、ガスリーがペレスに交わされて5番手、角田は1つポジションを下げるが、すぐさまフェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)をオーバーテイクして順位を戻す。角田は、ホンダF1パワーユニット勢の中で最初となる9周目にピットイン。その2周後にガスリーがピットへ入り、両者ともハードタイヤへ履き替えた。レッドブル・レーシング・ホンダは、フェルスタッペンが12周目にピットイン。これで首位を走行していたルイス・ハミルトン(メルセデス)の前に出て、リードを広げる。ここからペレスがペースを上げて、ファステストラップを連発しながらピットへ。タイヤ交換にやや時間がかかったものの、ハミルトンの前でコースへ戻り、レッドブル・レーシング・ホンダが1-2体制を築く。30周目に、ランス・ストロール(アストンマーティン)の左リアタイヤが、高速区間でバーストしてクラッシュ。セーフティカーが出動する。このリスタートでも、フェルスタッペンとペレスは1-2の位置をキープ。ガスリーはより新しいタイヤを履いていたセバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)にパスを許して5番手となる。レースが残り5周に差し掛かったとき、首位を快走していたフェルスタッペンの左リアタイヤが突如パンク。時速320㎞以上に及ぶメインストレートでスピンを喫する。幸いにもフェルスタッペンにケガはなかったものの、コース上に散らばった破片やタイヤの状況を考慮して、レースは赤旗中断となる。中断の間に全ドライバーがタイヤ交換を完了し、全車がソフトタイヤを装着。レースは、残り2周からスタンディングスタートで再開され、ポールポジションにペレス、ガスリーと角田は4番手と7番手からのリスタートとなった。2番手のハミルトンはペレスをオーバーテイクすべく、ターン1で並びかけてきてくるが、そのまま止まりきれずにコースアウト。これによってリードを確保したペレスは、レッドブル・レーシング・ホンダ加入後初めての勝利を手にした。一方のガスリーはリスタート時のターン1で、3番手に浮上。しかし、後方のルクレールと激しいバトルとなり、ファイナルラップ突入直前のストレートで一度は前に出られるも、スリップストリームに入って再び抜き返し、3位でチェッカーフラッグを受けた。角田はリスタートでのバトルを経て7位でフィニッシュ。自己最高順位を更新した。ホンダF1としては、この勝利が通算81勝目。モナコGPに続く勝利で、1992年のモナコGP・カナダGP以来の連勝となった。また、ホンダF1パワーユニットのダブル表彰台は、2020年のバーレーンGP以来。異なる2チームが同時に表彰台へ登壇するのは、2019年のブラジルGP以来となる。この結果、レッドブル・レーシング・ホンダはコンストラクターズチャンピオンシップでのリードを26ポイント差に拡大。スクーデリア・アルファタウリ・ホンダも、アストンマーティンを抜き、ランキング5位へと浮上した。次戦は、6月20日(日)決勝のフランスGP。その翌週からはオーストリアでの2連戦と、ここから3週連続の戦いとなる。田辺豊治(ホンダF1 テクニカルディレクター)「今日のアゼルバイジャンGP決勝は、トップを快走していたレッドブル・レーシング・ホンダのフェルスタッペン選手がクラッシュしたことにより、残り3周で赤旗中断になるという、我々にとっては大きな波乱が起こったレースになりました。チームメートのペレス選手は、終止フェルスタッペン選手に続く2番手を走行し、同僚のリタイアによりトップとなった赤旗中断の後にも、きっちりとポジションを守りきり、自身のキャリア2回目、レッドブル・レーシング・ホンダへの移籍後初となる優勝を獲得しました。また、スクーデリア・アルファタウリ・ホンダのガスリー選手が力強い走りとともに3位でフィニッシュしたことにより、ホンダF1としてダブル表彰台を獲得することができました。角田選手も7位入賞を果たし、熾烈な中団グループで闘うアルファタウリ・ホンダにとって貴重なポイントを獲得したことにより、コンストラクターズランキングを5位に押し上げました。今週末の4人のドライバーの好パフォーマンスと、戦略やピットストップなど、チームの素晴らしい働きが、マシンに速さを与え、予選での4台Q3進出、そして今日のレースでの好結果に結び付きました。ここからは1週を挟んで欧州での3連戦に向かいます。タフな戦いが続きますので、十分に準備をして、またいい戦いができればと思います」本橋正充(ホンダF1 エイニアエンジニア)「ここは最初のセクターは狭い街中を走る入り組んだレイアウトで、その後はエンジン負荷が高い長いストレートがレイアウトされています。PUとしてはパワー、ドライバビリティー、エネルギーマネージメントなど、さまざまな要素をうまくバランスしなければならないとても難しいサーキットです、そのような中でも、なんとかレース中にうまくマネージメントでき、我々としてできる限りのパフォーマンスを出すことができたと思っています。特にエネルギーマネジメントの設定は非常に難解ですが、HRD-SakuraとHRD-UKがここまで積み上げてきた努力と経験により、今日のレースもいい設定で走ることができました。両ファクトリーのエンジニアたちが開発を頑張ってきた成果が出たレースだったと思います。荒れた展開ですので、レースオペレーションを担当するエンジニアとしてはすごく忙しく、かつ疲れるレースになりました。事前にチームと一緒にさまざまなシナリオを想定してきましたし、終始いい走りを見せていたガスリー選手が赤旗などの...