ホンダF1は、2020年のF1世界選手権の目標としてパワーユニット面で“平地でもメルセデスと互角”に戦い、レッドブルとともに“チャンピオンを獲得”することを目標に掲げた。昨年、レッドブルとのパートナーシップを開始したホンダF1は、レッドブルのマックス・フェルスタッペンが3勝を挙げ、トロロッソ(今季からアルファタウリとして参戦)が2回の表彰台を獲得するなど、2015年にF1に復帰してから大きな躍進を遂げた。
しかし、序盤はパワーユニット的にはまだメルセデスと戦えるとは感じていなかったとHRD Sakuraでパワーユニット開発責任者を務める浅木泰昭は振り返る。「調子がいいのはだいたい標高が高いところ。HondaJetの技術を使わせてもらっているおかげもあり、ターボ、コンプレッサーの効率が良いということで標高が高いところでは結構いけていると感じていた。ただ、標高が低いところではまだ負けている。それが私なりの分析だった」と浅木泰昭は振り返る。それでもマックス・フェルスタッペンが優勝し、特にピエール・ガスリーがルイス・ハミルトンを抑えて2位表彰台を獲得したブラジルGPでは「メルセデスと対等に戦う」という目標に近づいたと実感できたと浅木泰昭は語るが、それでもインテルラゴス・サーキットは他のサーキットと比較すれば高地にあるトラックだ。「今年は平地でもメルセデスのパワーユニットに追いつくことを目標にして開発をしてきた。それが達成できているかどうかは、開幕してからわかることだと思う」とも浅木泰昭は語る。新型コロナウイルスの影響によるコスト削減策として、今季はパワーユニットのアップデートは凍結されている。ホンダF1は、当初の開幕戦であるオーストリアGPで投入する予定だったパワーユニットを進化させた『スペック1.1』でシーズンを戦うことになる。「今年のパワーユニットは開幕戦オーストリアに持ち込む仕様で固定してシーズンを戦うことになっている」と浅木泰昭は語る。「何基使っていいかはレース数によって変わってくるので、そこはダメージコントロールの作戦を含めてこれから決まってくることになる」「本来はスペック1、スペック2、スペック3という3段階で戦う計画で、本来オーストリアGPでスペック2を投入する計画だった。そこから大きくは変化していない。オーストリアに持ちこむのはスペック1から少し進化したスペック1.1を持ち込む」それでもスペック1.1は「1年で伸びると想定していたパワーの3分の1くらいは伸びていると思う」と浅木泰昭は語る。7月5日に開幕戦の舞台となるレッドブル・リンクは、昨年マックス・フェルスタッペンとともにホンダのF1エンジンが13年ぶりに勝利を挙げた地だ。「メルセデスとホンダのどちらが勝ってもおかしくないという状況のなか勝つというのが目標だ」と浅木泰昭は語る。「オーストリアは験のいいサーキットだし、去年はターボ効率を考えても同等に戦うことができたので期待している。メルセデスも昨年の問題点は解決していると思う。期待と不安が半々くらいだ」「今年の目標は、もう2位を目指すという目標はないのでシリーズチャンピオン。我々としては最低でもメルセデスとオブのパワーユニットを目指す」開幕戦に向けてすでに英国で自主隔離期間を過ごしているホンダF1のマネージングディレクターを務める山本雅史は、2020年の“大きな節目の年”だと語る。「マクラーレンの3年間では、F1に参加していなかった遅れを取り戻す勉強をさせてもらった。201818年からトロロッソ、そして2019年からはレッドブルとパートナーを組み、2チーム4台体制となり、パワーユニット開発も大きく加速した。今年は大きな節目の年だと思っている」と山本雅史は語る。「スタートラインの時点で今年はいい戦いができそうだと考えていて、カタロニアのテストでも毎日が充実していた。ホンダが一丸となってファンの期待に応えられるようにチャンピオン争いをして、年末に皆さんと笑顔になれるように、1戦1戦謙虚に戦っていきたい」