ホンダF1のマネージングディレクターを務める山本雅史が、2020年のF1世界選手権の展望について“総合力”でタイトルを狙いにいきたいと力強く語った。新型コロナウイルスの世界的な大流行によって中断を余儀なくされていた2020年のF1世界選手権だが、7月5日にF1オーストリアGPで開幕する。レッドブル・リンクは昨年、マックス・フェルスタッペンがホンダF1に13年ぶりの勝利をもたらした縁起のいいサーキットだ。
「やはり昨年復帰後初優勝しているオーストリアから始めるという意味ではもちろん験がいいですよね」と山本雅史は語る。「もちろん、メルセデスはDASを最初から持ってくるとか、いろいろ新しい技術を投入してくるとかはもちろんあるんだけど、そこは浅木(泰昭/パワーユニット開発責任者)が新たにスペッック1.1(パワーユニット)と言ってくれているのと、信頼性が高くなったのと、現場での田辺の指揮で、また昨年同様にうまく攻めながら、最初の3連戦は戦いたいなと思います」レッドブルの上層部はメルセデスF1がDASをレースを使用した場合、抗議することをチラつかせているが、実際のところはどうなのだろうか?「聞いていないですね」と山本雅史は語る。「今年はレギュレーション的にOKと聞いているので。本当にいい形で彼らがそれでマージンあるかどうかもレースをやってみたいとわかんないし、やっぱり技術が深くなればなるほどリスクも増えるじゃないですか。そういった意味ではやってみなければわからないかなと思っています」新型コロナウイルス対策として、F1は厳しい安全・衛生プロトコルを実施する。レッドブルとアルファタウリの2チームにF1パワーユニットを供給するホンダにとっては難しい状況となる。「すべてコンストラクターズチーム、マニュファクチャラーが一緒に動くので。それに私たちってレッドブルとアルファタウリの2チームにパワーユニットを供給しているじゃないですか。私も田辺もレッドブル側にいろということでレッドブル側に入っているんですけど、アルファタウリ側には今のルール上ではいけないんですよね」と山本雅史は語る。そのため、同じサーキットにいても、チーム間の連絡はメールや電話になるという。「昨日もアルファタウリのフランツ(トスト)から『オーストリアで話しよう』とメール来てましたけど、『いやいや、それはあり得ないだろう」と。そうことはいくつか不便なことが起こると思いますね」今年はF1日本GPが中止という残念なニュースが発表された。ホンダF1にとって鈴鹿サーキットはホームレースであり、1987年に復活したF1日本GPは33年でその歴史が途切れることになった。「本当に私たちホンダにとってもホームコースである鈴鹿でレースができないということは本当に今年は悔しいし、残念なことだと思います」と山本雅史は語る。「しかし、チェイス・キャリーも言っていたように、やはりお客さんを入れるとか、フライアウェイはお客さんベースでやりたいとか、いろいろFOMと鈴鹿、モビリティランドとのやり取りで、やはり今の日本の状況だと三密と言われているようなことも含めて、非常に厳しい状況だと思うんですね。そういったことで、私たちホンダとしてはFOMと皆さんの決めたことに従うと。もちろん、三重県を含めていろんなところと調整してたようなので、そういった意味では非常に悔しい思いというのと、安全なくしてレースも厳しいのかなというのが正直なところですね」今年は33年ぶりのタイトル獲得に期待がかかっている。ホンダF1として何勝を目標に掲げているのだろうか。「何勝という決め方は非常に難しいと思うんですね。レース数もまだ明確に出ていないです。そういったことも含めて、私が思うにはちゃんとパワーユニットの進化も含め、チーム力、すべての総合力なので、そういった意味で毎年、昨年の結果を上回るってところに目標を置いています」「もちろん、レースなんで10チームで争っているわけですから、ましてやメルセデスがDASとか新しい技術を入れてきている中でいうと、オーストリア開幕にむけては、他チームも車体側をアップデートしてくるでしょうね」「ホンダはスケジュール通りアップデートしたとしても、他社がどれだけやってくるか、もちろん予測を立ててやってるんですけど、実際レースしてみなければわからないというのが正直なところですかね」「19年の昨年は復帰後初優勝して、昨年はワールドチャンピオンに届く戦いはできないと思っていたのが、今年は戦えるっていう風には思っているので、そういった意味ではファンの皆さんの応援、期待に応えられるように、一戦一戦、謙虚さをもって、総合力でなんとか勝ち取れればなと思います」