ホンダのF1エンジンの技術開発は、パワーを増加し、信頼性を高めるために、HRD Sakuraだけでなく、ホンダの総力を挙げて行われている。そのひとつがパワーユニット部品の内製化だ。これまでホンダF1は部品を外注に頼っていた。しかし、全国にあるホンダの製作所で部品を製造し、品質を高めた。
HRD Sakuraで設計を担当する角田哲史は「我々は競争相手に対して非常に遅れていたので、いろいろなトライ&エラーをとにかく早く回したい。早く回していくには、ものづくりそのものも非常に速いスピードで回さないとそれができない」とNHKの特集番組で語った。ホンダF1のパワーユニット開発責任者を務める浅木泰昭は「やはり、自分で作るしかないという部品も世界の最高峰になってくると出てくる。今、耐久性などで苦しんでいることを何とか解決する部品にできないかと考えました」と語る。そんなホンダF1の要請に応えたのが、本田技術研究所の統括本部の鈴木信雄だ。社内の様々な繋がりを生かして製作所の協力を取り付けた。「『なんでF1の部品を僕たちが』という抵抗もありました。我々も市販車の方で力を向けていましたし、抵抗が出ていたのは事実です」と鈴木信雄は振り返る。それでも鈴木信雄は諦めず、技術者にホンダ全体の技術向上のためということを繰り返し力説した。「部品はF1、レースのものだという観点ではなく、切削技術という断面で見るとレベルを上げられる。そういったレベルの高い仕事をやると、通常のものが簡単というわけではないですが、普通に見えてくる」と鈴木信雄は語る。「レースの世界に対する部品に造ることで、市販車にも転用できる。そういう考えで取り組んでもらいました」例えば、パワーユニットのシリンダーヘッドカバーは、アルミを溶かして型に入れて作る鋳造で作っていたが、製作所の技術により、アルミの塊から削り出して作れるようになった。そのことでより品質を追求した部品作りができるようになったと角田信雄は語る。「材料の強度レベルを選択し、強い強度のものを使うことで、結果として信頼性が良くなり、軽くも作れる。こういう製法というのはF1の世界では既知の技術なんですね。やっと我々も同じようなことができるステージに来れたと実感しました」と角田信雄は語る。浅木泰昭も「Sakuraの数少ないメンバーだけでレースを戦うのではなく、オールホンダで戦おうということがだいぶ成果を挙げてきた」と語った。
全文を読む