ホンダとレッドブルの提携は、F1を追いかける人達の間で、しばしば「プレッシャー」という言葉とともに語られる。トロロッソに加えてレッドブル・レーシングとの提携が決まったことで、ホンダが2015年にF1に復帰してから抱いてきた「チャンピオン争い」に近づくという目標にさらに接近した。
レッドブル・レーシングは過去10年間にドライバーズタイトルとコンストラクターズタイトルを各4回獲得。昨シーズンは4回優勝している。正に勝つためのチームであり、そのプレッシャーに対する準備はできているとホンダの山本雅史モータースポーツ部長は語る。「レッドブルの判断基準はレースで勝つため、チャンピオンになるために必要かどうかです。それが彼らの最優先事項であり、明確な目標に向かってチーム一丸となって取り組んでいます。彼らと交渉を始めてから、その印象は変わりません。そのような生粋のレーシングチームと仕事をすることを本当に楽しんでいます。交渉を始めた時から、ファンやメディアから期待されるビッグチームだということは分かっていましたので、その意味では準備はできていました。今はプレッシャーと期待が半々という気持ちです」レッドブル・レーシングのチーム代表クリスチャン・ホーナー氏は過去3年に渡ってチームの勝利を見届けてきたが、チームは2013年以来チャンピオンになっていない。目標はホンダと一緒にチャンピオンに返り咲くことであり、お互いの良さを引き出すためには辛抱が必要だとホーナーは語る。「ホンダと働き始めて感じたことは、非常にストレートで分かりやすい関係性を築けていると言うことです。我々には情熱があります。率直でオープンな対話を重ねてきて、F1に対するホンダの意志の強さが分かりましたし、互いに理想的な組み合わせだと思っています。今までのところ順調ですし、この先も喜びを分かち合いたいと思います。12年ぶりにPUサプライヤーを変更したので、ここからさらに互いを知る努力が必要です。ローマは1日にして成らずというように、我々は2~3年のスパンで考えています。今シーズンは1年をとおして成長していければいいと思っています。フェラーリやメルセデスとの差を見れば、ここ1~2年の自分たちのポジションが分かります。得意なサーキット、苦手なサーキットがありますが、どのサーキットでも結果を出せるようになるのが目標です」昨年のトロロッソとの提携があり、ホンダとレッドブルの関係はすでにある程度成熟している。昨年1年間の関係が、今年のホンダとレッドブルの提携に結びついたとクリスチャン・ホーナーは語る。「2018年のホンダとトロロッソの提携は戦略的に重要な決断でした。レッドブル・テクノロジーはトロロッソにギアボックスなどのドライブトレインを提供しています。トランスミッションをホンダのPUに組み込む過程で、彼らの仕事を垣間見ることができました。彼らの1年をとおした成長を見て、レッドブル・レーシングのPUのサプライヤーを決めました」レッドブルとの提携が始まっても、トロロッソとの提携が終わるわけではない。2チームと提携するのは4年前にF1に復帰してから初ですが、山本雅史はあらゆる面でいい影響があると考えている。「1年をとおしてより良い結果を出すという目標は両チーム一緒です。ホンダとしては計画どおりにアップデートを進め、レースでの勝利を目指します。チャンピオンへのチャレンジの年にしたいと思っています」その目標はレッドブルやクリスチャン・ホーナーとも共有されている。ミルトンキーンズの両社のファクトリーはクルマで数分の場所にある。大御所デザイナーのエイドリアン・ニューウェイを始めとしたスタッフが働くファクトリーには、すでにいい影響があらわれているとクリスチャン・ホーナーは語る。「ファクトリーは前向きな雰囲気で満ちていますし、レースに情熱的に取り組む新しいパートナーと仕事をできることに興奮します。ホンダとレッドブルのエンジニアは目標に向かって懸命に取り組んでいます。デザイナーとして馬力のあるPUを望むエイドリアンにとって、今回の提携は歓迎すべきものです。彼はHRD-Sakuraも訪れ、ホンダのPUへの変更がスムーズにいくように尽力しました。技術的な連携を深めている技術チームは今までと心機一転、新たな提携に対して情熱的に取り組んでいます」新しい提携がレッドブルを後押ししているのと同じく、ミルトンキーンズとSakuraのホンダのファクトリーもいい雰囲気に満ちている。強いチームと組む効果について、山本雅史は次のように語る。「レッドブルのようなトップチームとパートナーシップを組めることは、ホンダにとっては大きなプレッシャーであると同時に、間違いなく大きなチャンスであると感じています。昨年、トロロッソとは互いにリスペクトしながらもオープンな非常にいい関係を築けたと思っていますが、今年はレッドブルとも同様のパートナーになれると信じています。すぐにトップ争いをするレベルで勝負を見せられるかは実際に走ってみないと分かりませんが、一緒に前進を続けていけるパートナーシップだと強く感じています」