ハースF1チームの小松礼雄代表は、F1のコストキャップ(予算上限)時代において、自チームだけが上限額まで予算を投入できていない現状を明かした。ライバル勢との開発競争で後れを取っている背景には、技術力ではなく資金面の制約があると説明している。シーズン序盤は好調だったハースだが、中団ライバルが大型アップデートを次々と投入したことで競争力は低下。
小松代表は、チームの能力には自信を示しながらも、「スタッフに十分な武器を与えられていない」と責任は自身にあると語った。ハースだけが予算上限未満で運営ベルギーGPのメディアデーで小松礼雄代表は、現在のF1で予算上限額まで資金を投入できていないチームはハースだけだと明かした。「もちろん、予算上限まで使いたいです。でも、現状ではそうなっていません」「私の仕事の優先事項のひとつは、このチームが予算上限まで使えるだけの資金を確保することです。それがまず達成すべき最低ラインだと思っています」ベアマン「開発競争の速さについていけない」オリバー・ベアマンは、2026年マシンの開発スピードが前年とは比較にならないほど加速しており、その流れにハースが対応できていないと分析した。「昨年はレギュレーションが非常に成熟していて、シーズンを通して大きな性能向上はありませんでしたが、アップデートを投入するタイミングは良かったですし、他のチームも小さな改善を積み重ねていました」「でも今年は開発のペースがまったく違います。トップチームは毎週のように大規模なアップデートを投入していますし、その開発スピードには驚かされます」「まず、僕たちにはそれができません。そしてライバルと比べても開発競争で追い抜かれてしまいました。投入したアップデートの量が足りませんでしたし、持ち込んだものも期待どおりには機能しませんでした」「今年のように開発競争が激しい時代になると、僕たちの弱点がより露わになります。昨年は開発スピードが今の4分の1程度だったので、そこまで問題にはなりませんでした」小松礼雄代表「能力ではなく資金の問題です」小松礼雄代表は、アップデートが機能しなかったというベアマンの見方には異論を示したものの、開発競争で後れを取っているという点については認めた。その一方で、原因はスタッフの能力不足では決してないと強調している。「それはスタッフの能力不足を意味するものではありません。皆、本当に素晴らしい仕事をしてくれています。チームの規模やリソースを知っている人なら、今の成果がどれだけすごいことか理解してもらえると思います」「スタッフには十分な能力がありますし、チームワークも良く、コミュニケーションも取れています。誰かを責める文化ではなく、チームとして機能する文化もできてきています」「ただ、彼らが実力を発揮できるだけの武器を、私がまだ与えられていません」序盤の好調は「予想以上でした」小松礼雄代表は、レギュレーションが大きく変わった2026年シーズン序盤にハースが好成績を残したこと自体が予想以上だったと振り返る。「シーズン序盤のパフォーマンスは、本当に予想以上でした」「これだけ大きなレギュレーション変更があった年に、F1で最も小さなチームがあのような走りを見せるとは普通は期待できません」一方で、その状態を維持するのは難しかったとも認めた。「これはスタッフの責任ではありません。私自身の責任です。チームの収益をもっと増やして、スタッフが力を発揮できる環境を整えなければいけません」「スタッフにもドライバーにも十分な力があります。環境さえ整えられれば、必ずまた競争力を取り戻せると信じています。ただ、それには時間が必要です」シュタイナー時代から続く課題ハースは2016年のF1参戦以来、フェラーリ製コンポーネントを積極的に採用する独自の運営モデルを続けてきた。一方で、チームオーナーのジーン・ハースが十分な投資を行っていないのではないかという議論は以前から続いており、それが前代表ギュンター・シュタイナーとの決別につながった要因のひとつともされている。小松礼雄代表は、できるだけ早く予算上限まで資金を投入できる体制を実現したい考えを示した。「取り組み始めたばかりというわけではありません。ずっと続けていますし、今も非常に前向きな話し合いができています」「でも正直に言えば、今の制約はスタッフにとってフェアではありません。両手を縛られた状態で戦っているようなものです」それでもチーム内には責任転嫁する雰囲気はないという。「マイアミやバルセロナ、シュピールベルク、シルバーストンで苦戦した時も、誰も隠れたり責任逃れをしたりはしませんでした。『何が問題だったのか』『なぜこうなったのか』『どう改善するのか』という話ばかりです。その姿勢は本当に尊敬しています」「だから私は、スタッフが本来ふさわしい環境で仕事ができるようにすることだけを考えています」ハースは2026年序盤に中団争いで存在感を示したものの、ライバル勢の積極的な開発によって競争力を失いつつある。小松礼雄代表は、その原因はスタッフの能力ではなく予算面の制約にあると強調し、予算上限まで運営できる体制の実現こそがチーム再浮上への鍵になるとの考えを示した。