ハースF1チームの小松礼雄代表が、ポッドキャスト番組「Inside the ICE House」に出演し、トヨタとのパートナーシップやF1の成長、組織文化の重要性について語った。小松礼雄は、2024年に始まったトヨタとの技術提携が、2025年末のタイトルパートナー契約によってさらに深化したと説明。その原点には、トヨタ自動車会長の豊田章男との“価値観の一致”があったと振り返った。
豊田章男との初対面で確信した“共通の哲学”小松礼雄は、2024年夏に東京で豊田章男と初めて対面した際、「10年、15年来の知り合いのようだった」と感じたと明かした。「何にワクワクするのか、朝起きる理由は何か、そういう話をしました。契約の話はほとんど出ませんでした」そう振り返った小松礼雄は、「大きな協業ほど、人間関係が重要になります」と説明。豊田章男と“人を育てること”への考え方が一致したことで、ビジネス面は自然と整っていったと語った。また、小松礼雄はこの提携を「完全に50対50の関係」と位置付けている。「ドライバーでも、エンジニアでも、メカニックでも、マーケティングや財務でも、人を育てることが重要です。F1は人格や人間性を成長させる環境でもあります」と述べ、F1を“人材育成の場”として捉えている考えを明かした。テストチーム創設で若手育成を加速小松礼雄は、トヨタとの協業によって若手育成の幅が大きく広がったことも説明した。現行F1マシンには走行制限があるため、ハースF1チームは旧型車を活用した「テストチーム」を新設。これにより、若手ドライバーや若手エンジニア、メカニックに実践機会を提供できるようになったという。「トヨタ側の若手ドライバーに機会を与え、トヨタのエンジニアと我々のエンジニアを統合しています。将来的には組織全体に広げていきたいです」さらに、小松礼雄は、F1で育成した人材が将来的にトヨタ本社へ戻ることにも大きな価値があると強調した。「国際的な環境で成長した人材がトヨタ自動車へ戻れば、将来的に会社をさらに発展させる重要人物になる可能性があります」と語り、モータースポーツを通じた長期的な人材育成の重要性を説明した。“最小チーム”だからこそ文化が重要小松礼雄は、ハースF1チームが現在もグリッド最小規模のチームであることに触れ、「だからこそ協力体制が重要になります」と語った。「400人規模の我々が1200人規模のチームと戦うには、全員が同じ方向を向き、支え合う必要があります」そのうえで、「結果だけでなく、どんな文化を作るのかを共有することが大切です」と説明。トヨタとの協業によって、段階的に組織能力を拡張できていると述べた。Netflix時代でF1は“別のスポーツ”になったF1全体の変化について、小松礼雄は「23年前とは完全に別世界です」と語った。「2003年当時のF1は、純粋にレースをする場でした。ですが、デジタル時代やSNS時代への対応が遅れていました」しかし、リバティ・メディア体制やNetflix『Drive to Survive』の成功によって、F1は大きく変化したと分析した。現在は女性ファン比率が42%に達し、若年層も大きく増加。小松礼雄は、中国ではドライバーが“K-POPスターのように扱われている”とも紹介した。「以前は“モータースポーツはこうあるべき”と思っていましたが、今は違う楽しみ方があっていいと思うようになりました」と述べ、多様な楽しみ方を受け入れることがF1成長の鍵だと語った。決断力と“失敗を恐れない文化”F1の現場では瞬時の判断が求められるが、小松礼雄は「最も悪いのは何も決断しないことです」と強調した。「15秒決断を遅らせれば、ピットタイミングを逃すこともあります」そのため、チームには「失敗を恐れず決断できる安全な環境」が必要だと説明した。また、問題発生時には“責任追及文化”ではなく、“学習文化”が重要だと語る。2025年開幕戦でマシンに大きな問題が発覚した際には、「問題を認めること」から始め、エンジニアに解決策を委ねたという。「もし何もしなければ、何も学べません」そう語った小松礼雄は、リスクを取る決断をリーダーとして引き受けた結果、エンジニア陣が自信を深め、最終的にはシーズン終盤に“5番目に速いマシン”へ成長できたと振り返った。“才能”だけでは成功できない人材評価について、小松礼雄は「能力だけでは不十分です」と説明した。「どれだけ優秀でも、周囲を壊すような性格なら意味がありません」F1では協調性や謙虚さ、チームへの貢献意識が極めて重要だと語った。また、若手ドライバーのオリバー・ベアマンについても高く評価した。「18歳でF1カーに初めて乗った時点で、チーム全体の目的を理解し、それを実行できていました」さらに、自らミスを分析し、次のアタックで即座に修正できる“学習能力”にも感銘を受けたと語った。“純粋にレースのために存在するチーム”最後に小松礼雄は、TGRハースF1チームの独自性についてこう語った。「我々は飲料を売るためでも、クルマを売るためでもなく、純粋にレースのために存在しています」そのうえで、トヨタを中心とした“同じ価値観を持つパートナーの共同体”が形成されつつあることに大きな可能性を感じていると説明した。
全文を読む