ハースF1チームが富士スピードウェイで実施した旧型車テスト(TPC)の2日目が8月7日に行われ、スーパーフォーミュラとスーパーGTの両シリーズを制したダブルチャンピオン、坪井翔が初めてF1マシンをドライブした。走行開始前こそ緊張の面持ちだったが、いざマシンに乗り込むとt坪井翔はその実力を存分に発揮して1分17秒470のベストタイムを記録。2008年の日本GPでフェリペ・マッサ(フェラーリ)が記録した公式コースレコード1分17秒287に迫るパフォーマンスを披露した。
走行後、集まった多くのメディアに囲まれた坪井翔は、「F1っぽいですね」と笑顔を見せた後、「小さい頃から夢見てきたF1に乗れるなんて、本当に夢のようでした。TPCテストで2年前のクルマとはいえ、F1ドライバーとして走れたことは、僕にとって最高の1日でした」と喜びを語った。ミディアムタイヤ2セットでのアタックでは、タイム更新のたびに成長を感じさせる走りを見せたが、ベストラップにはわずかな悔しさも滲む。「セクター2でクルマがすごく良くなったんですが、その分セクター3で失ってしまって……富士の“あるある”ですね」と苦笑い。「F1にはいじれるスイッチがたくさんあって、そこをもう少し使いこなせていれば更新も狙えたかもしれません。1分17秒2が見えていたので、ちょっと悔しいです」と振り返った。それでも、自らの実力はしっかり示せたと胸を張る。「今まで乗ってきた中で一番速いクルマで、しっかりタイムも出せた。富士に関しては、F1を走らせられるだけの力はあると証明できたと思います」と自信を見せた。F1ならではの体験も坪井に強烈な印象を残した。なかでも驚きが大きかったのは、可変リアウイングを用いたDRSの効果だという。「ボタンを押した途端にブーストがかかったような加速をして、『お〜F1だ!』と思いました。ダウンフォースもパワーもブレーキも全部すごかったけど、走ってるときは集中していてあまり意識しませんでした」と、興奮を隠さなかった。また、初のF1体験を支えたのは、前日にマシン調整と走行を担当したリザーブドライバー平川亮の存在だった。「平川選手が参考になる走りをしてくれて、クルマを乗りやすい状態まで持ってきてくれた。僕はそのまま走りに集中できたし、エンジニアやドライビングアドバイザーからも具体的な指示をもらえて、本当に助かりました」と、チームの支援に感謝を述べた。初日は「とにかく緊張していた」と語る坪井。操作すべきモードやボタンの多さに不安もあったが、それを乗り越えて108周をノーミスで走破。「こんなにたくさん温度管理や設定変更が必要だとは思っていなかった。新しい世界が見えて、新しい引き出しが増やせた1日でした」と語った。最後に、「このクルマを使ってレースをしてみたい気持ちになった。世界のトップ選手たちと自分がどこまで戦えるのか試してみたい」と語る坪井。遠い憧れだったF1が現実味を帯び、新たな夢への扉が開かれた。
全文を読む