松下信治が、日本人初優勝という快挙を達成した伝統のモナコGPを振り返った。GP2シリーズ第2戦はモナコGP。F1と同様に、GP2にとっても特別な舞台での戦い。モナコ市街地に設置された狭く、滑りやすい路面のコースに挑んだ松下信治だったが、フリー走行の前半、第1コーナーで曲がりきれずバリアに衝突。このセッションは9周走行しただけで終わることになった。
予選は、カーナンバーの偶数・奇数によって2グループに分かれて行われた。A組でタイムアタックを行った松下信治は、フリー走行で満足に走れなかったことが影響し、なかなかタイムが伸びない展開に。結果はA組6位。全体では12番手という予選順位となった。「フリー走行でクラッシュした際に手首を痛めてしまいました。バーチャルセーフティカー明けで、タイヤが冷えているのはわかっていたのでブレーキングを早めにしたのですが、それでも足りませんでした。完全に僕のミスで、チームに申しわけないです。これまでの中でもワーストレースかもしれません」と松下信治は振り返る。「トップとはコンマ8秒差、フリー走行であまり走れなかったので、予選ではそれが響いてしまいました。レース1ではクラッシュしないようにして、小さなポイントでもいいのでとにかく取って、レース2につなげたいです。必ずアクシデントがあるでしょうから、その中で必ず生き残って、結果を出します!昨年、初めて走ったモナコに比べると、最初から全然速く走れていて、それで行き過ぎちゃったのかもしれませんね。マシンは、依然として速い。それだけに、とても悔しいです。バルセロナからの悪い流れを、なんとか立ち切りたかったのですけど残念な結果です」F1が休みとなる金曜日に行われたレース1。得意のスタートは決まった松下信治だったが、第1コーナーの混乱でポジションを落として1周目は13番手に。なかなかオーバーテイクができないコースで、松下信治は前を行くマシンにアタックを仕掛けるが、ポジションを上げられない展開が続く。8周目、タイヤ交換のピットインで、ようやくポジションアップに成功。その後は上位選手のアクシデントなどが重なり、9位で40周のレースを終えた。さらに、上位の選手のペナルティーによりリザルトは8位に。アクシデントを避ける堅実な走りが功を奏し、リバースグリッドで行われるレース2はポールポジションという好展開に恵まれた。「スタートはバッチリ決まって2台抜いたのですが、第1コーナーの混乱で順位を落としました。その後、マシンの調子はすごくよくて、このコースはなかなか抜けないのですが、それでもいいペースで走り続けることができました。ピットインを予定より1周遅らせたことで、1台抜くことができたのはよかったですね。レースでの戦略はいろいろ考えたのですが、僕のグリッド順からすると順位を上げられる可能性が高いのはスーパーソフトでのスタートだと思いました。でも逆の戦略で僕の後ろからスタートした選手が優勝してるわけですし、モナコは本当に不確定要素が多いです」ポールポジションからのスタートとなった松下信治は、必勝を期してレースに臨みました。スタートで若干ホイールスピンさせ出遅れたが、第1コーナーのブレーキングをギリギリまで遅らせてイン側のポジションを死守。1周目をトップで終える。その後は、後続を引き離す快走を続け、全く危なげないレースを展開に。レース終盤の28周目にはファステストラップを叩き出し、見事30周のレースを制した。伝統のモナコGPでの勝利は、日本人初の快挙だ。「スタートではクラッチのバイトが強過ぎて、それでちょっとホイールスピンしてしまいました。でも、すぐに次の対処ができて、最悪の結果は避けることができました。2番手の選手のスタートがよく、並びかけられたのですが、1コーナーのブレーキングを我慢して、なんとか首位をキープできました」「あとはもうマシンがすごく調子よかったので、最速タイムを狙いにいきました。後続との間合いを計りながら、どれくらいのペースで行くか、エンジニアと無線で話し合いながら走りました。特に意識して攻め続けたわけじゃなくて、自然に差が付いて行った感じですね。レース中はずっと安定して走れました。ヒヤッとすることもなかったですね。チェッカーまでは、最速タイムを狙って走っていましたし、特に緊張したり、固くなることはなかったです」「モナコの表彰台は、ほかとは全然違うので見たことのない景色でした(笑)。勝てたのはもちろんうれしいですけど、レース2なので。次はレース1を制したいです! 単独で走れば速いことはわかっているので、とにかく週末全体をきちんと組み立てて、本来の速さを出せるようにしたいです。そうすれば自然と、レース1でも勝てるはずですから。開幕戦のスペインから悪い流れが続いていましたけど、これで完全に変えられたと思います。モナコで勝つのは特別ですけど、やっぱり昨年の(ハンガリーでの)初優勝で聞いた”君が代”の方がうれしかったかな(笑)。この週末は最初のフリー走行でミスしたことが本当に大きかった。それが次に向けての、課題です」また、HFDPアドバイザーを務める鈴木亜久里は「力が抜けて、いい走りができていましたよ。本来なら9番手だったのに8位に上がれ、それがポールスタートになってなかったら今日の優勝はなかった。そのチャンスをしっかり生かして勝ったのだから、すばしいです。いいレースだったと思います」と振り返った。