FIA(国際自動車連盟)のモハメド・ビン・スライエムFIA会長は、将来的にF1をV8エンジン時代へ回帰させる構想を改めて強調した。現在のマシンは複雑化と重量増加が進み、コストや安全性の面で課題を抱えていると指摘している。F1のパワーユニットメーカー各社はすでに2027年および2028年のレギュレーション修正で合意しているが、ビン・スライエム会長はその先の次世代規則を見据えている。
持続可能燃料を使用する自然吸気V8エンジンへの移行により、軽量化とコスト削減を同時に実現できるとの考えを示した。複雑化した現代F1への問題提起モハメド・ビン・スライエム会長は、現在のF1マシンが抱える最大の問題として「複雑さ」を挙げた。「今のクルマの最悪な部分は何か? システムの複雑さ、開発に費やされる莫大な資金、コスト、そして大きなクルマだ」現在のF1マシンはハイブリッド技術の発展に伴い大型化・重量化が進んでいる。会長は、その重量増加が安全性にも悪影響を及ぼしていると考えている。「大きくて重いクルマは何を意味するのか? それは安全ではないということだ」630kgの軽量マシンを目指すFIAは近年、安全性向上のために車両重量を増やしてきた。しかしビン・スライエム会長は、今後はその流れを逆転させるべきだと主張する。「私は完成状態のマシンで650kg未満を見たい。私の目標は630kgだ」現在のF1マシンは最低重量が800kg近くに達しており、この構想が実現すれば大幅な軽量化となる。V8自然吸気エンジン復活を提唱ビン・スライエム会長は軽量化を実現する手段として、持続可能燃料を使用する自然吸気V8エンジンを提案している。「内燃エンジンだけで約760馬力、そこに10%程度の電動化を組み合わせることができる。それならサウンドも生まれるし、はるかに安価になる」現在の複雑なハイブリッドシステムと比べて、パワーユニットそのものを大幅に簡素化できるという考えだ。コスト削減とファン重視の姿勢ビン・スライエム会長は、この構想によって研究開発費の削減も可能になると説明した。「研究開発費は大幅に安くなる。エンジン自体もずっと軽くなり、扱いやすくなる。そして観客はサウンドを楽しめる」さらに、この変更はファン、チーム、メーカーのすべてに利益をもたらすと主張した。「我々はビジネスとスポーツへの愛情の両方を支えなければならない。ファンに何かを提供する必要がある」2031年より前倒しの可能性も示唆一方で、会長は一方的な導入を考えているわけではない。実現にはパワーユニットメーカーやチームとの協議が不可欠だと認めている。「チーム、とりわけパワーユニット供給者との協議は重要だ」ただし合意が得られるなら、当初想定される2031年より前倒しでの導入も歓迎する姿勢を示した。「もし彼らが1年早く導入したいのであれば、我々は非常に歓迎する。なぜなら、その方が簡単で安価だからだ」F1が持続可能性とエンターテインメント性をどのように両立させるのか。その議論はすでに2030年代へ向けて始まっており、ビン・スライエム会長はその方向性として軽量なV8マシンへの回帰を強く訴えている。