F1元レーススチュワードのティム・メイヤーが、2025年末に予定されているFIA(国際自動車連盟)の次期会長選に立候補することを発表した。現職のモハメド・ビン・スライエム会長が無投票で再選されると見られていた中での出馬表明は、大きな波紋を呼びそうだ。59歳のアメリカ人であるメイヤーは、15年以上にわたってF1のスチュワードを務めた経験を持ち、父は1970年代にマクラーレンを率いたテディ・メイヤー。
今回の決断について、メイヤーは「FIAを率いるには何が必要かを過去6カ月間かけて考えてきた。その結論は、加盟クラブにはより良いリーダーシップが必要だということだった」と語る。「ビン・スライエムは3年半前、透明性の確保、ガバナンスの強化、自身は非業務執行の会長にとどまるといった約束を掲げて当選したが、実際にはその逆が起きている。FIAはもっと良いパートナーであるべきだし、ドライバーや国際選手権と誠実に向き合うべきだ」と批判した。さらにメイヤーは、「小規模クラブの声を代弁し、必要な改革を正直に語ることが自分の使命だ。リーダーシップとは個人の魅力ではなく、誠実さと経験が問われる。私は34年間、モータースポーツに携わってきた。今こそ恩返しをする時だ」と述べている。FIAは近年、複数の上級職の退任や、スウェアリング(放送禁止用語)に対する規制強化などをめぐってドライバー陣との対立も抱えてきた。メイヤー自身も、2024年アメリカGPでの観客侵入問題に関連する聴聞会への関与が原因で、ビン・スライエムから「個人攻撃だ」と受け取られ、テキストメッセージで職務を解任されたと主張している。ただしメイヤーは、「今回の立候補は私怨によるものではない。FIAの価値観を取り戻すためだ」と強調。「FIAは優秀な人材を迎えても、真実を語ると排除してしまう。意思決定には議論が不可欠であり、私はそれをすぐに改革したい」と語る。また、ドライバーとの関係についても言及し、「彼らはモータースポーツの中心的存在であり、対等なパートナーとして接するべきだ。誰も子どもではなく、キャリアの頂点にいる人々だ。すべての関係者が尊重されるべきだ」と述べた。ビン・スライエム体制下での各種規約改正についても、「すべてを並べてみれば、1人の権力を強める方向に進んでいることは明白だ」と懸念を示している。一方、メイヤーはFIAのモビリティ部門にも力を入れる意向を示しており、先日36の自動車クラブがビン・スライエム支持を表明した件については、「選択肢が与えられない中での署名に過ぎない。本当の投票は12月に行われ、そこでは民主的なプロセスが守られる」と述べた。「私は一人一人に直接説明し、信頼と票を勝ち取らなければならない。変革を実現するために、私と私のチームの力を証明してみせる」と決意を語っている。
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