フェラーリは2026年F1マシン「SF-26」において、可動式フロントウイングを作動させる油圧システムをノーズ内部ではなく、シャシー前端部にオーバーハング配置するという解決策を採用したことが明らかになった。新レギュレーション下で導入された可動式フロントウイングは、事故や接触時にピットレーンで素早くノーズ交換が可能でなければならない。そのため、油圧アクチュエーターの配置方法が技術的な焦点となっていた。
ロイック・セラ率いる技術陣は、ステアリングコラムをフロントサスペンションのロワアーム後方へ移設することで生まれたスペースを活用。従来ステアリングボックスが占めていた領域に、フラップを作動させるオン・オフ式油圧アクチュエーターを搭載した。この設計には二つの明確な利点がある。まず安全面だ。衝突時にノーズが損傷しても、油圧系統からの漏れリスクを低減できる。さらに重量配分の面でも有利となる。より重心寄りに質量を配置できるため、マシンが最低重量に到達した段階でフロントウイング側に有効なバラストを追加し、理想的なバランスを追求する余地が生まれる。現時点で詳細が確認できていないのは、航空機由来のクイックリリース式油圧コネクターの具体的な形状だ。ノーズとシャシーを固定する機械的アンカーと同様に、油圧接続部も迅速かつ確実な脱着が可能な位置に設計されているとみられる。今回確認されたアクチュエーターはオン・オフ方式で、フロントウイングは「開」か「閉」かの二択動作となる。ギアボックスやクラッチ制御のような比例バルブは必要としない構造だ。ノーズ内部には高圧配管2本のみが通され、シャシー側から供給される作動圧を左右の可動フラップへ伝達するレイアウトとなっている。フェラーリは2025年、SF-25のミュールカーを用いたピレリの開発テストにおいて、いち早く可動式フロントウイングを実戦投入していた。ピレリは前荷重変化に関する重要なデータを収集し、異なる空力設定下でのタイヤ挙動を把握。一方フェラーリも油圧制御システムの実用経験を積み重ね、今回のSF-26の完成形へとつなげた形だ。ステアリング配置変更と油圧制御の統合というパッケージング戦略は、2026年F1マシン設計における一つの解答を示している。
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