フェラーリのジョン・エルカーン会長は、自身のブランドへの関わりを「個人的な問題(personal matter)」と表現し、長期的な献身を改めて誓った。これは同社がキャピタル・マーケッツ・デーで業績予測を発表した直後、株価が大きく下落したタイミングでの発言だった。フェラーリは2025年の通期売上を71億ユーロ(約8.2億ドル)と見込み、2030年までに90億ユーロ(約10.4億ドル)規模に成長すると予測。調整後利益も36億ユーロ(約4.2億ドル)まで拡大する見通しを示した。
しかし投資家の期待を満たさず、ニューヨーク証券取引所では終値ベースで15%の下落を記録。2015年の上場以来、最大の一日下落率となった。イタリア国内市場でも最大16%の下落を記録している。フェラーリF1と耐久レースでの明暗この株価下落は、モータースポーツ活動の現状とも対照的だった。ル・マン24時間レースではハイパーカー「499P」が3連覇を達成した一方で、F1では苦戦が続いている。ルイス・ハミルトンを迎えた2025年シーズンは、ここ5戦連続で表彰台を逃している。フェラーリのキャピタル・マーケッツ・デーでエルカーン会長は次のように語った。「私の献身は、会長として、筆頭株主として、そして何よりもフェラーリを生涯の情熱として生きてきた者としてのものだ。我々が下すすべての決定はフェラーリの独自性を強化するためのものであり、従業員の才能と献身が未来への最大の保証になると信じている」「我々を信頼して夢を託してくれるフェラーリスタ(ファン)のために、そしてF1での勝利を待ち望む世界中のファンのために全力を尽くすつもりだ。耐久レースで3連覇を達成したように、F1でも勝利を取り戻したい」ヴィーニャCEO「F1でも勝たなければならない」ベネデット・ヴィーニャCEOもまた次のように強調した。「我々はかつて“レースで勝つ”という約束をした。499Pで耐久レースにおいてそれを達成した。だがF1では改善が必要だ。我々は勝たなければならない。それが世界中の忠実なファンへの義務だからだ」フェラーリが最後にF1タイトルを獲得したのは2008年のコンストラクターズ選手権であり、ドライバーズタイトルにおいては2007年のキミ・ライコネンが最後となっている。分析:エルカーンが直面する“ブランドの二面性”フェラーリの株価下落は、単なる投資家心理の反映ではない。エルカーン体制が掲げる「持続的成長」と「情熱の維持」という二つの価値観のギャップを示している。一方では、ル・マンでの連覇がブランド価値を高め、耐久部門の成功は経営戦略の成果といえる。だがF1では長期的な勝利の欠如が象徴的であり、フェラーリというブランドの中核である“サーキットでの栄光”を取り戻すことが、今後の最大の課題だ。エルカーンが「個人的な使命」と語るように、フェラーリの再建は単なる企業運営ではなく、文化的・情熱的遺産の再生でもある。F1チームの復活こそが、その真価を問う最終試験となるだろう。Source: PlanetF1.com