フェラーリの物流マネージャーを務めるセルジオ・ボンディが、シーズン中のミスが許されないF1の舞台裏について語った。2018年のF1シーズン、活動のピークは夏季休暇の直前にやってきた。わずか6週間の間にF1史上初の試みとなる3週連続開催を含め、5回のグランプリが開催された。
開催地がヨーロッパ圏の場合、機材はマラネッロからの18台のトレーラーで輸送される。その内訳は、ホスピタリティの建物用に8台、 テレメトリー・エリア用に3台、 ワーク・エリア用に4台、 ピット・レーン、ケータリング・エリア、そしてパドック・クラブ用に3台となっている。加えて、レーシング・マシンそのものも運ばなくてはならな。総計すると、機材だけで50トンに達し、さらにモーターホームの80トンが加わる。それは125人が携わる、途方もない物流の離れ業であると言える。この作業の中心人物となるのは、フェラーリの物流マネージャーを務めるセルジオ・ボンディだ。「かなりの量になりますよ」とセルジオ・ボンディは随分控えめに話す。「厳しい期限であっても、それまでに準備を完了させなければなりませんし、実質的にはわずかなミスも許されないのです」通常、機材の第一陣は、レースが行われる前の週の日曜日には「現地入り」していなければならない。セルジオ・ボンディは「翌日には『squadretta』と呼ばれる小チームがサーキットに到着し、月曜日の朝からピットやキッチン、それからモーターホームといった必要な建造物をすべて組み立て始めるのです」と語る。残りのサポートチームは、木曜日の朝から作業を開始できるよう、チャーター便の飛行機で水曜日にマラネッロを出発する。 次の週末にもレースが開催されるような場合、サーキットでチェッカーフラグが振られた直後から梱包作業を開始する。モーターホームだけでも解体に15時間、再び組み立てるのには丸2日もかかる。ここ数年、ヨーロッパ以外の大陸をまたぐレースの回数が大幅に増えてきている。そこで、効率を追求したフェラーリは、大陸間輸送の「マトリックス」を作った。「私たちは、比較的安価な機材をそれぞれ複数購入して、輸送計画に従って海上輸送用に同じ内容物の輸送セットを5つ用意しています」とセルジオ・ボンディは説明する。その方が空輸するよりも安く済むそうです。輸送セットの内容物は、椅子、テーブル、キッチン、ホスピタリティ・スイートのインテリア、ガレージ・パネル、エンジン・トローリー、そしてメカニックたちが作業台上のエンジンを直接整備する際に汚れた空気を除去するエクストラクション・ブースなど。例えば、今年の3月に船便でメルボルンに送られた機材は、のちに鈴鹿に運ぶため、一旦マラネッロに戻された。そして、4月にバーレーンに送られたセットは、10月にロシアへと運ばれた。さらに、モントリオールの機材はシンガポールで再び使用される。この他にもルートはたくさんある。それはまるで、時計仕掛けのようにすべてを緻密に進行させる、大規模なマトリックスとなっている。高価な荷物は船便ではなく、貨物輸送機で運ばれる。ヨーロッパ以外の場所で2週連続してレースが開催される場合、最初の週のレースが終わるとマシンは分解されて箱に詰め込まれたあと、特別に設計されたコンテナで空輸され、火曜日には次のサーキットに再び姿を現す。セルジオ・ボンディは「コストは最適化されています。そのため、私たちは世界選手権の各レースの物流業務に関して、輸送サプライヤーと契約を結んでいます」と語る。つまり、品質が保証されると同時に輸送コストを削減できるのだ。しかし、すべてがいつも計画通りにいくわけではない。「以前、嵐が一週間以上続いたせいで、船でジェノバを発った貨物が上海に予定通り到着しないと分かったことがあります」とセルジオ・ボンディは振り返る。彼らは中東でその船をつかまえると、機材を空輸できるよう準備し、アブダビ発のボーイング777に詰め込んだ。「こうした状況に陥ると、Bプランをすぐに実行できるように用意しておくことがいかに重要であるかよく分かります。もしBプランを用意していないのなら、要注意ですよね」とセルジオ・ボンディは語った。
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