フェラーリは、2016年のメルセデスとの戦いにむけて、エンジンパワー以外の改善にも注力していく。今シーズン、フェラーリはメルセデスとのギャップを縮め、3度の優勝を成し遂げた。両チームともにパワー面での差が接近した状態にあることを認めている。チームはお互いにGPSデータやトップスピードのデータを分析しながら常に相手の進歩に目を光らせてきた。
しかし、それでも正確な数値はわからないフェラーリのテクニカルディレクターを務めるジェームス・アリソンは語る。「残念ながら、自分たちのパワーユニットとライバルたちのパワーユニットを同じダイナモに乗せ、どちらが上かを対決させることはできない。なので、相手のパワーを量る方法はそれよりもちょっと不正確なものだ」とジェームス・アリソンは説明する。「昨年の我々はどうにもならないところにいたが、可能な手段を用いて、今年のメルセデスvsフェラーリのバトルを分析すれば、我々がそれなりに戦えるの位置にいたことがわかるはずだ」「しかし、だからといって我々が成功にあぐらをかいているわけではない。彼らも立ち止まっていてはくれないし、まだまだやれることはたくさんある。だが、パワーユニットチームとそのテクニカルパートナーたちはこの12カ月で卓越した働きを見せ、フェラーリを今日の位置まで引き上げてくれた」当然ながら、メルセデスのパワーも昨年と比べて向上している。つまり、フェラーリはすでに存在していた50馬力のギャップを縮めただけでなく、メルセデスの開発分を含めた進歩を遂げたということににある。2014年と2015年の2年にわたって頂点に君臨したメルセデスのモータースポーツ責任者トト・ヴォルフは、ミラーに映るフェラーリの姿がどんどん大きくなることへの懸念を口にしている。「フェラーリは2014年から大きな進歩を遂げており、そのリザルトを考えれば、2016年もそうなる可能性は十分にある」とトト・ヴォルフは警戒する。「我々はフェラーリとの競合とその脅威を非常に真剣に捉えている。競合は良いことだし、上位でアクションが増えることはF1にとって重要だ。フェラーリは我々の最大のフレネミー(友人であり敵)だ」実際、フェラーリがメルセデスの脅威になりたければ、追撃のスピードを緩めてはならない。ジェームス・アリソンはそうするために必要なポテンシャルはレギュレーションにまだ残されていると確信しているが、昨年よりも難しくなるのは間違いないと認める。「このレギュレーションはまだ比較的未熟だと考えている。パワーユニットは素晴らしいレベルに到達しているが、レギュレーションにはまだ成熟の余地があるはずだ」とジェームス・アリソンは語る。「昨年の方が単純ではあった。ゲインがどこにあるのかを探り出してしまえば、自分たちのエラーを修正するのは容易だった。だが、我々、メルセデス、ルノーとホンダが向き合っているのはまだ未熟なレギュレーションだ。そこにチャンスがある」「ライバルも休んでいてはくれないし、我々だってそのつもりはない。来年も進歩したいと考えている。保証されている自分たちの絶対的な力だけでなく、人々のハングリーやスキルによって、先頭に食らいついていけることを願っている」一方、ジェームス・アリソンは、フェラーリはエンジン以外にも目を向ける必要があると語る。「これはエンジンフォーミュラではない。V8時代の終わりと比べれば、エンジンフォーミュラになったというのもうなずける。凍結されたエンジンでは手の出しようがないからね。だが、今のフォーミュラは昔のF1にかなり近づいている」「メルセデスが強いのは彼らがロケット並のエンジンを持っているからだけではない。マシンも非常にいい。彼らを倒したけでば、フェラーリはあらゆるレベルで改善しなければならない。それはチャレンジだ。パワーユニットはその鍵となる部分になるが、シャシーも重要な一部だ」