マクラーレンとアウディが、ジュニアカテゴリーで圧倒的な実績を残してきた英国の新星フレディ・スレーターを巡り、将来の囲い込みを視野に入れた駆け引きを繰り広げている。17歳のスレーターは、高級トイレタリーブランド「Baylis & Harding」のオーナー兼マネージングディレクターであるエイドリアン・スレーターの息子で、7歳からカートレースを始めた。
以降、2023年ジネッタ・ジュニア選手権、2024年イタリアF4、2025年フォーミュラ・リージョナル・ヨーロピアン選手権(FRECA)を次々と制覇。2026年にはトライデントからF3にステップアップする。とりわけ2024年のイタリアF4では15勝を挙げ、アンドレア・キミ・アントネッリのシーズン最多勝記録(13勝)を更新。ランキング2位のジャック・ビートンに161ポイント差をつける圧倒的な内容だった。さらに昨季にはAIXレーシングからF3にスポット参戦し、サクヒールでのデビュー戦でいきなり2位表彰台を獲得している。どのF1育成プログラムがスレーターを獲得するのかジュニアでの輝かしい戦績を持ちながらも、スレーターは現在、特定のF1育成アカデミーに所属していないフリーの立場にある。だが、その状況は長く続かない可能性が高い。F1事情通のジョー・サワードによれば、昨年のサクヒールでの走りが高く評価され、3年目のF3シーズンを戦っていたフェルナンド・アロンソ門下のニコラ・ツォロフと真っ向勝負を演じたことで、「バーレーンでは近いうちにパパイヤカラーを身にまとうのではないかという噂が広がっていた」という。スレーターはADDマネジメントに所属しており、同社はランド・ノリスのマネジメントも手掛けている。一方で、状況を変えたのがアウディF1の動きだ。仏誌『Auto Hebdo』によると、アウディはスレーターに強い関心を示しており、2028年にガブリエル・ボルトレトと組ませる将来構想まで浮上しているという。両者が現在の勢いを維持できれば、大きな投資に値すると見られている。アウディが有力視される背景には、FRECAで2025年にスレーターに次ぐ2位となり、2026年はF3で同じくトライデントから参戦するマッテオ・デ・パロの存在もある。デ・パロは2025年末にマクラーレンF1の育成プログラム入りが発表されており、これがマクラーレンとアウディの思惑をより複雑にしている。ジュニアフォーミュラでタイトルを総なめにしてきたスレーターを、最終的にどのF1陣営が取り込むのか。マクラーレンとアウディによる静かな争奪戦は、今後さらに注目を集めそうだ。