メルセデスF1代表のトト・ヴォルフは、F1の将来的なV8エンジン復活について「原則的にメーカー間で一致している」としつつも、2031年以前に前倒しするのは経済的に合理的ではないとの見解を示した。FIA会長のモハメド・ビン・スライエムは、F1の将来のパワーユニット規則において、よりシンプルで安価、かつ軽量なエンジン導入を推進しており、2029年からの導入を目指していた。これが実現すれば、来年導入される新ハイブリッドPUをわずか3シーズンしか使わないことになる。
このテーマについては、まずバーレーンで現行および将来のOEMとの会議が行われ、その後ロンドンで詳細を詰める予定だった。しかし、イタリアGP週末の土曜日、FIA会長はPUメーカー各社に書簡を送り、2029年導入に広範な支持が得られていないことを理由に会議の延期を通知した。現行のFIAパワーユニット・ガバナンス協定に基づけば、この提案にはFIA、商業権保持者FOM、そして大多数のメーカーの支持が必要となる。しかし、数億ユーロ規模の投資を行ったばかりのアウディとホンダは、2026〜2030年の規則を前提に参入していることから、早期切り替えに強く反対している。一方、メルセデスとフェラーリはV型8気筒エンジンへの2030年シーズン前の切り替えに妥協の余地を示していたものの、わずか3シーズンでの再変更は、2026年PU開発と並行して多大な投資を強いることから支持しなかった。ヴォルフは「ファンの関心を引く最高のレギュレーションを持つことが我々共通の目的だ」と説明。「そして最終的にV8は最良のコンセンサスだった。自然吸気で高回転を誇り、エネルギー回生システムがパフォーマンス差別化の要素になり得る。そして持続可能燃料とも整合している」「ほとんどのOEMは『2年後に新エンジンを開発する二重コストのプログラムはやりたくない』と考えている。我々もそれは望まなかった」また、ヴォルフはフォード(レッドブルのパートナー)や2029年から独自PU製造を計画するキャデラックを含め、方向性については足並みが揃っていると述べた。「今はビン・スライエムと(F1 CEOの)ステファノ・ドメニカリと対話する段階だ。彼らの期待は何か? そして全てのOEM、PUメーカーをテーブルに集めて『次にどうするのか』を決める。利害は一致している。今は非常にバランスが取れた合理的な会話ができている」フェラーリ代表のフレデリック・バスールも「急ぐ必要はない」と強調した。「議論はしているが、簡単な選択肢ではない。近いうちに共通プロジェクトを見出せるが、今日や明日すぐに決める必要はない。工場では誰もが2026年に集中している」「PUメーカー、FIA、F1の間で合意できる項目はいくつかある。それはF1の利益になるものだ。議論を続けて合意点を見出すことが理にかなっている」また、来年からアウディに移行するザウバーのジョナサン・ウィートリー代表も、ドイツメーカーの立場を改めて表明した。「アウディがF1参入を決めた際の柱は3つあった。高効率エンジン、先進的なハイブリッド技術、そして持続可能燃料だ。その立場は変わっていないし、長期的に維持されるだろう」
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