F1の2026年レギュレーションには、正当な批判や懐疑が数多く存在するが、その中に「最低重量規定への懸念」は含まれるべきではない。2026年の最低重量は現在、「724kg+名目上のタイヤ重量」と定められており、これはピレリが来年導入する新タイヤがまだ開発中であることに起因している。現行の最低重量は800kgであり、来季の規則の目的の1つはこれを削減することにある。
レッドブルF1のチーム代表クリスチャン・ホーナーは、マイアミGPの週末にこの最低重量規定について問われた際、批判的な姿勢を示した。しかし、当然ながら、単にレギュレーションに数字を記載しただけでは、車両の軽量化は実現しない。少なくとも、直接的にはそうならない。「重量については、空から数字を引っ張ってきたようなものだ」とホーナーは語った。「エンジンはかなり重くなっているのに、車体の最低重量は下げられている。これはすべてのチームにとって非常に大きなチャレンジになる」「重量を削るには莫大なコストがかかる。各チームはラップタイム向上のために、どこで削るかの選択を迫られるだろう。10kgの削減は約0.35秒の短縮に相当する。すべてのチームにとって最低重量に達するのは非常に困難だ」ホーナーの主張は、「最低重量はF1において達成可能であるべきだ」という前提に基づいている。しかし、そもそもなぜそれが当然でなければならないのか。安全性に関する規定が存在し、ドライバーの体格差による不公平を避けるためのバラストルールが維持されるのであれば、最低重量を攻めた数値にすることに問題はない。最低重量は「達成可能であるべきもの」という考えが、ある種の信条のように受け入れられてきた。実際、2022年に新レギュレーションが導入された際、開幕直前に最低重量が引き上げられたが、これは軽量化に成功していた当時のアルファロメオ(現ザウバー)にとって不利な変更となった。最低重量を達成することが「当然」とされるなら、努力して軽くしたチームを逆に不利にする構図になる。この「達成可能であるべき」論に異を唱えたのが、メルセデスF1のテクニカルディレクター、ジェームス・アリソンだ。彼は2023年カナダGPの記者会見で、F1マシンの軽量化にはチーム側に問題を委ねるのが最も効果的だと主張している。「技術規定だけで車を大幅に軽くするのは非常に難しい」とアリソンは語る。「車を軽くするためには、単純に最低重量を下げて、あとは我々が考えるべき問題にするのが一番だ」「規定を超えて重いマシンを作れば、何を車に載せ、何を省くかについて、かなり難しい決断を迫られることになる」「もちろん、この意見に同意しない人もいるだろう。しかし、目標とする結果に至るための条件を作り出すことは、規則で直接その結果を定めるよりも効果的な手段となり得る」F1はコストキャップ制度のもとに運営されており、軽量化に多大なコストがかかるという批判は妥当ではない。資金力のあるチームだけが有利になるわけでもない。むしろ、軽量化は各チームの設計プロセスの一環であり、すべてのチームにとってパフォーマンス向上の鍵といえる。確かに、これには難しい選択が伴うが、それだけに技術的な挑戦としての意義がある。そしてその成果は、直接的にパフォーマンスへと結びつく。パフォーマンスの差が広がるリスクがあるという見方もあるが、軽量化によってバラストの自由度が増すという観点からは、後方のチームにも利点はある。もちろん、「最低重量が不要」と言いたいわけではない。実際のところ、車の大部分の質量は技術規定によって定められている。ただ、F1チームは課題解決において非常に高い能力を持っている。だからこそ、「最低重量」という規定の目的に対する意識を見直すべき段階に来ている。劇的な変化は望めなくとも、重量に関する課題の改善には確実に貢献するだろう。