F1は、2021年の新F1レギュレーションでF1マシンに“グラウンド・エフェクト”を取り入れた空力コンセプトを採用するとしている。グラウンド・エフェクトとは、車体下面と地面の間を流れる空気流を利用してダウンフォースを生成することを指し、航空工学用語の『グラウンド・エフェクト(地面効果)』に由来する。
現在のF1マシンは、車体表面でダウンンフォースを生成しているが、その結果、乱気流が発生して後続マシンが近づけないという問題が発生している。グラウンド・エフェクト・カーは、航空機の主翼による揚力発生原理を逆向きに応用したもので、連続の方程式(断面積が狭ければ流体の速度は上がる)とベルヌーイの定理(流体の速度が上がれば圧力は下がる)を利用している。そのため、空力付加物を車体表面に追加することなくダウンフォースを発生するため、後続マシンへの乱気流の発生を抑えることが可能となる。かつてF1ではロータス・78など、グラウンド・エフェクトカーが存在していたが、車体のピッチングによってダウンフォースが突如失われる危険性をはらんでおり、1982年にはジル・ヴィルヌーヴの事故死などを受けて、1983年から「フロントタイヤの後端からリアタイヤの前端までの車体底面は平面でなければならない」とするフラットボトム規定が施行され、事実上グラウンド・エフェクト・カーは禁止となった。2021年のF1レギュレーションではグラウンド・エフェクトがアレンジされ、2つのディフューザーを跳ね上げたベンチュリー構造が巨大なダウンフォースを生み出す仕様となる。FIAのシングルシーター責任者を務めるニコラス・トンバジスは2021年F1マシンについて「我々は、レースでマシンがお互いに接近するエキサイティングなバトルを望んでいる。また、タイヤのパフォーマンスが短期間で劣化することなく、お互いにバトルができるようにしたい」とコメント。「多くの小型パーツが取り除かれ、現在のマシンよりもシンプルになる。特にサイドポッドの前部とフロントウイングはシンプルになる。そして、マシン下部のディフューザーはベンチュリー構造となる。サイドポッドの下が前から後ろにかけてトンネルのように構造になる」「2つの強力な空気の渦がリヤウイングが発生する乱流を吸い込む。その結果、後続マシンが受ける気流はかなりクリーンなものになる。それにより、後方のマシンが失うダウンフォースが大きく減少する」「2021年マシンでは2台の車間距離で後続マシンのダウンフォースが(2017年の)約50%から約5~10%まで減少される。我々は後続マシンのダウンフォースの削減を大幅に削減する」