2012年F1マシンが徐々に公開され、その「段差ノーズ」が注目を集めている。2012年F1マシンのトップバッターとして発表されたケータハム CT01には、ノーズ部分に段差のあるカモノハシのような段差ノーズが装着され、その“醜い”形状が大きな話題を呼んだ。3日(金)に発表されたフェラーリ F2012、フォース・インディア VJM05にも段差ノーズが採用され、その姿を見たF1ファンの反応は概ねネガティブ。
段差ノーズは、2012年に改訂されたレギュレーションによる産物。FIAは、安全性を理由に2012年マシンのコックピット前から150mmのノーズの最大高を基準面から550mmに制限。だが、モノコック前端の最大高は625mmのままであり、フロントのバルヘッドの厚みは最低275mmに定められている。F1チームは、少しでも多くの空気をマシン下に流したい。だが、前述の制限によりモノコック下に確保できる空間の高さは決まってきてしまい、そこにノーズ高制限を合わせるとマシン上部には75mmの段差が生まれてきてしまう。マシン上部に段差がないにこしたことはないが、その部分の空気抵抗よりもマシン下のダウンフォースを優先した結果が段差ノーズだといえる。ケータハムの技術責任者を務めるマイク・ガスコインは「我々のチャレンジは、マシン下にクリーンな気流を流せるように常にシャシーをできるだけ高くしたいということだ。CT01に見られるものはそのための我々の解決策だ」と段差ノーズについて述べている。マクラーレン MP4-27にはノーズにそのような段差はないが、マクラーレンは前年マシンからモノコックの高さを625mmいっぱいに使っておらず、ハイノーズにしなくても効果を生み出せるノーズ形状にしてきた。しかし、そのMP4-27もノーズは昨年よりも前傾しており、開口部も広げられるなど変更がみられる。だが、段差ノーズはその見た目ほどの影響はないというのがF1チーム首脳の意見だ。フォース・インディアのテクニカルディレクターを務めるアンディ・グリーンは「ノーズ高のレギュレーションの影響は非常に小さい。空力効果より視覚効果の方がずっと大きい」とコメント。フェラーリのチーフデザイナーを務めるニコラス・トンバジスは「シャシーの下部はできるだけ高くしたいというのがダイナミック面の願望だ。例えそれが美学的には気持ちよくないとしても、マシンのそのエリアにとっては最も効果的な空力ソリューションだ」と説明している。もっとも、段差ノーズよりも2012年F1マシンの設計に大きく影響するのがブロウン・ディフューザーの禁止だ。ディフューザーに排気ガスを流せないようにFIAはエキゾーズト出口の角度や形状を規定。マクラーレン MP4-27がL字型サイドポッドを廃止したのはこの影響が大きいと考えられる。段差ノーズとは異なり、各F1マシンのリア部分はまだ多くの偽装が施されており、シーズン開幕までに各マシンのリアにどのようなソリューションが採用されるかが注目を集めることになるだろう。しかし、段差ノーズは美しくない。「美しいマシンは速い」と言われるF1。レッドブルのマシンにはRB5時代から形状は違えど段差が設けられているが、空力の鬼才エイドリアン・ニューウェイがレッドブル RB8にどのような処理を施してくるか注目だ。関連:・F1マシンの醜い段差ノーズを隠す“化粧パネル” - 2012年2月5日・ロータス E21、段差ノーズを継続 - 2013年1月29日・F1チーム、2013年に段差ノーズをカバーで覆えることで合意 - 2012年9月18日
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