ケータハムの2014年F1マシン『CT05』は、1ポイントも獲得できなかったが、その醜悪な“アリクイノーズ”でF1に歴史を刻むことになった。2010年にロータス・レーシングとして参戦したチームは、2011年にチーム・ロータスを名乗ったが、グループ・ロータスとの関係が悪化し、訴訟沙汰に巻き込まれ。その結果、2012年からはトニー・フェルナンデスが買収した自動車会社「ケータハム」の名称を使用し、「ケータハムF1チーム」として参戦する。
2014年、F1はホイールに乗り上げるクラッシュやTボーン・クラッシュのリスクを減少させ、より安全性の高いレースの実現を目指してローノーズ・デザインを義務付けた。しかし、ローノーズではモノコック下面に導ける空気流が制限されてしまい、フロアが発生するダウンフォースの大部分が失われてしまう。そこで各チームはレギュレーションで定められたノーズ断面積を最小限にするためのソリューションに苦心した。この結果、ノーズ先端部に奇妙な突起が組み込まれることになり、F1史上最も奇妙で醜いノーズデザインがいくつか生まれた。そのなかでも群を抜いて醜悪だったのがケータハム CT05だ。“アリクイノーズ”はその中で比較的まともな呼び名であり、そのフォルムはファンの間ではより軽蔑的な名称で呼ばれた。開幕戦では突起をブラックで塗装してなんとか見繕ったが、同系色で塗られたプレシーズンテストでの初登場時の衝撃は物凄いものだった。2014年、ケータハムは小林可夢偉とマーカス・エリクソンを起用。だが、ケータハム CT05はその見た目通りに競争力はなく、ルノーのパワーユニットの信頼性問題に加えて、チームの財政難によって7月にはチームを売却。第12戦ベルギーGPでは突然小林可夢偉に代えて、アンドレ・ロッテラーを起用。第13戦イタリアGPでは小林可夢偉に復帰するなど財政難にあえぐチームによくある不可解なドライバー交代が行われた。財政難はパーツの生産自体に影響を及ぼいで、F1ロシアGPの週末、小林可夢偉はケータハムのF1マシンの安全性に出場辞退を考えていたことをFacebookの個人アカウントで明らかし、ケータハムのマシンに施された劣悪な修復の内容を公開した。「恐ろしい! サスペンションの損傷が昨夜見つかったけど、スペアないのでカーボンで巻き巻きの修復した! 毎回チェックするけどこれで走ってくださいといわれても恐ろしすぎる! もう帰りたい。。これから練習と予選とレースあるんだぜ。。 真剣に悩み中。。 レーサーとして走ったほうがいいので? 安全に辞退した方がいいのか。。 因みにあと15分で走ります。。」マイレージ制限により、初めて走るサーキットにも関わらず満足な走行は出来ず、決勝では21周目に突如ピットインを命じられ、その場でリタイヤ。チーム発表によればリタイヤさせた理由はブレーキのオーバーヒートといる。その後、チームは管財人の管理下に入り、アメリカGPとブラジルGPを欠場。最終戦アブダビGPでは小林可夢偉クラウドファンディングなどによる資金調達によって参戦が可能となったが、レースはリタイアで終えた。チームは5シーズンの参戦で1ポイントも獲得できないままF1から撤退する。
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