ホンダは5月14日に発表した2026年3月期決算で、EV市場環境の急変を受けて四輪電動化戦略を大幅に見直したことを明らかにした。北米向けEVモデルの開発中止や製造終了、中国市場での商品計画修正などにより、EV関連損失は総額1兆4536億円規模に達した。営業損益は4143億円の赤字、最終損益も4239億円の赤字へ転落している。
EV市場失速で戦略を全面修正ホンダは決算資料の中で、EV市場環境が「日々激しく変化し、先行きが不透明な状況」と説明した。特に米国では、EV補助金見直しや化石燃料規制の緩和によってEV市場の拡大スピードが鈍化。販売奨励金の増加やEV販売台数の減少が進み、中国市場では新興EVメーカーとの競争激化が進行しているという。こうした状況を受け、ホンダは北米で生産予定だった一部EVモデルについて、上市および開発中止を決定。共同開発していたEVモデルについても製造終了や生産台数削減に踏み切った。さらに2026年3月12日には、四輪電動化戦略そのものを見直し、追加のEV計画停止を決断したことも開示している。“1兆円超”のEV関連損失今回の決算で最大の焦点となったのは、EV関連損失の規模だ。ホンダは売上原価に1兆479億円、研究開発費に3978億円、持分法投資損益に1241億円などを計上。EV関連損失は総額1兆4536億円に達した。特に大きかったのは、北米EV計画の中止に伴う減損処理だ。北米EV向け製造設備や開発資産について、ホンダは「売却および他への転用は困難」と判断。回収可能価額をゼロ評価とし、5213億円の減損損失を計上した。加えて、上市前に開発中止となったEVモデルに関連する開発資産についても3314億円の除却損失を計上している。関税と米国政策転換も直撃決算資料では、米国政府の政策転換も重要な要因として挙げられている。ホンダは、関税やEV税制優遇措置廃止、排出規制緩和などによって経済合理性が大きく変化したと説明。不利な契約に対する引当金として1062億円を計上した。さらに、部品供給契約や業務提携契約に関する補償費用などを含む引当金として5610億円を計上。EV戦略見直しがサプライチェーン全体へ波及している実態も浮き彫りとなった。それでもホンダは黒字回復を予想一方でホンダは、2027年3月期には黒字回復を見込んでいる。通期見通しでは、営業利益5000億円、親会社株主に帰属する当期利益2600億円を予想。EV関連損失についても、2026年3月期の1兆4536億円規模から5000億円規模へ縮小する見通しを示した。今回の決算は、世界的なEV市場減速と政策転換が、自動車メーカーの戦略をいかに大きく揺さぶっているかを象徴する内容となった。