ジェンソン・バトン(45歳)は、先週末に行われた世界耐久選手権(WEC)最終戦バーレーン8時間レースを最後に、プロフェッショナル・レーシングドライバーとしてのキャリアを正式に終えた。自身が語るところによれば、「F1引退のときよりも悲しい」と感じたという。2000年にウィリアムズからF1デビューしたバトンは、エンストン系チーム(ルノー)、BAR、ホンダ、ブラウンGP、マクラーレンと渡り歩き、2016年シーズンをもってF1から引退。
特に2009年には、ホンダ撤退後にロス・ブラウンがチームを引き継いだブラウンGPで、F1ワールドチャンピオンのタイトルを獲得した。その後は2018年と2019年にスーパーGTへフル参戦し、以降はスポーツカーやラリークロス、NASCARなど多彩なカテゴリーでスポット参戦を続けてきた。2024年からはキャデラックを駆るハーツ・チーム・ヨタのNo.38号車でWECに復帰し、セバスチャン・ブルデー、アール・バンバーと組んで今季最高位はサンパウロ6時間の2位。最終戦バーレーン8時間では16位でフィニッシュした。「F1のときとは違う感情」──静かに迎えた“本当のラストレース”スカイF1のテレビ解説者およびロレックスのアンバサダーとしても知られるバトンは、ロレックスのインタビューで次のように語った。「最後のレースは本当に感情的だった。長い間プロとしてレースを続けてきて、45歳になった今でも全力を尽くして競争力を保てていることを誇りに思っている。でも、人生があまりに忙しくなりすぎたんだ」「F1を引退したときは違う感情だった。あのときは“新しいモータースポーツの世界に挑戦できる”というワクワク感があった。でも今回はもっと感情的で、悲しさのほうが大きい。ただ、その一方でキャリアを振り返る良い機会にもなった」さらにバトンはBBCに対して、「やり残したことはない。自分の成し遂げたことには満足している」と語り、今後もグッドウッド・リバイバルのようなクラシックカーレースには参加する意向を示した。長いキャリアの幕引きと“バトン流の幸福論”バトンの発言からは、20年以上にわたるプロキャリアを締めくくる充実感と、年齢を重ねても競う意欲を保ち続けた自負がうかがえる。F1時代の「次なる挑戦」への興奮とは異なり、今回の引退は“終わり”を受け入れる成熟した決断だ。それでも彼は完全にステアリングを置くわけではない。クラシックイベントでの走行を楽しみながら、レースという情熱と関わり続ける姿勢を示している。モータースポーツの多様な世界を渡り歩き、どの舞台でも品格と探究心を失わなかったバトン。彼の言葉どおり「やり残したことはない」と胸を張れる終幕は、まさに理想的な“レーサーの引退”といえるだろう。
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