2023年F1シーズンからスプリントのフォーマットが変更された。新フォーマットの概要を説明する。F1は過去2シーズンでスプリントを合計6レース開催した。2023年シーズンは開催数が2倍になり、オーストリア、ベルギー、カタール、アメリカ(オースティン)、ブラジル、そして初戦を担うアゼルバイジャンと、1シーズンで6レースが開催される。
また、2023年シーズンは新フォーマットが用意されており、これまでのスプリントとは異なる。概要これまでのスプリントで共通していた問題は「無難なレースに終わる」ことだった。レースアクションはほとんど見られず、ドライバーの大半はアクシデントに巻き込まれて決勝をグリッド後方からスタートするのを嫌がって守勢に回り、ポイントや順位を優先しなかった。しかし、今シーズンのスプリントはこの問題を解消すべく独立したレースになった。現行のレースウィークエンドは5セッションで構成されている。通常は3セッションがフリープラクティス、残り2セッションが予選と決勝に充てられるが、昨シーズンまでのスプリントはこの5セッションをフリープラクティス2セッション、競技(予選・スプリント・決勝)3セッションに変えていた。しかし、今シーズンのスプリントではフリープラクティス1セッション、競技(予選・シュートアウト・スプリント・決勝)4セッションになる。これは競技セッションを増やすことでファンへの期待にさらに応えていくための変更と考えられている。アゼルバイジャンGPのスケジュール金曜日・ フリープラクティス・ 予選(決勝のグリッドが決定)土曜日・ スプリント・シュートアウト(スプリントのグリッドが決定)・ スプリント日曜日・ 決勝フリープラクティススプリントが開催されるレースウィークエンドで最も興味深い点は、フリープラクティスの回数が減ることだ。セットアップを最終決定するまでにたった1時間の猶予しか与えられないことはチーム全体のバランスに影響を与える。なぜなら、予選のためにガレージを出た瞬間からマシンはいわゆるパルクフェルメ状態に入るため、ピットレーンスタートを選択しない限り、ボディワークやサスペンションに変更を加えられなくなるからだ。そのため、FP2とFP3を失うのはチームにとって厄介なのだが、おそらくさらに厄介なのは、分析とシミュレーションに費やせていた “FP1から予選開始までの27時間” を失うことだろう。また、FP1から得られるデータ量も大幅に減少する。なぜなら、フリープラクティスから予選までの時間が短く、通常の金曜日のようにセンサーパッケージを取り外してレース用に車重を再調整する余裕がないため、センサーパッケージを装着できなくなるからだ。今シーズンはすべてがより実用的になる必要がある。たとえば、チームはFP1開始前にそのレースウィークエンドのセットアップを決定し、FP1でそれが確実に機能することを確認しなければならない。サスペンションやボディワークのセットアップ変更は通常15〜20分のため、各チームは1カ所変更できるかもしれないが、ここでの明確な意図は、自分たちを信じ、自分たちの信念を貫くことだ。簡単にまとめれば、プラクティスの時間が短いほど、プラクティスから得られる情報は少ない。よって、予選以降でミスが起きる確率はかなり高い。非常にエキサイティングだ。 予選新しいスプリントフォーマットでは金曜日の予選セッションに通常の土曜日の予選と同じルールが適用され、早々に日曜日の決勝でのグリッドが決まる。土曜日は予選と決勝にはまったく関係がない。また、スプリントが開催されるレースウィークエンドはタイヤの配分がやや異なり、ハードタイヤ2セット、ミディアム4セット、ソフト6セットとなる。FP1でソフトタイヤ1セットを試すか、残して予選に挑むかは、かなり興味深い戦略的判断になるだろう。スプリント・シュートアウト金曜日の予選を終えたあと、土曜日にもう一度 “予選” が開催される。スプリントの予選に相当するスプリント・シュートアウト(またはシュートアウト)は通常の予選と同じく3つの短いセッションで構成されているが、それぞれの時間が12分(SQ1)、10分(SQ2)、8分(SQ3)に短縮されている。セッションの時間を短くしたのは、各セッションにおける各マシンのアタック数を1回に抑え、一発勝負感を高めるのが狙いだが、SQ1とSQ2では2回アタックできる可能性が残されている。とはいえ、時間との厳しい戦いになることが予想され、サーキット次第の部分も大きい。また、一部のサーキットでは問題が起きる可能性がある。なぜなら、SQ1とSQ2では新品ミディアム1セット、SQ3では新品ソフト1セットと、各シュートアウトで使用しなければならないタイヤセットが決められているからだ。スプリント日曜日の決勝のグリッドにまったく影響しないことを除けば、スプリントのフォーマットは前シーズンまでと変わらない。これまでと同じように全長100km・制限時間30分に規定されているため、バクー市街地コースでは17周勝負になる。スタート時のタイヤは自由に決めることができるが、ポイントを獲得できるのは上位8人で、1位8ポイントから8位1ポイントまで1ポイントずつ下がっていく。スプリントは短期決戦のためピットストップはほとんど確認できないだろう(しかし、ルール上は禁止されていない)。よって、最初の戦略的判断はスタート時のタイヤ選択になる。歴史的に、これまではミディアムかソフトが選ばれてきた。ソフトはグリップ性能が高く、ミディアムは寿命が長いためペースを安定させることができる。簡単にまとめれば、優れたタイヤでスプリントのスタートを切りたいか、最終盤で優れたタイヤを残しておきたいかの2択になる。決勝日曜日の決勝は、金曜日にグリッドが決まることを除けば、通常通りのルールで開催される。ファンにとっての小さな問題点を挙げるとすれば、スプリントでそれなりの距離を走るので、各チームがロングランのペースについてより確実な情報を得ることだ。土曜日と日曜日のもうひとつの接点は、グリッド降格ペナルティのルールだ。パワーユニットのグリッド降格ペナルティは引き続き日曜日に適用され、金曜日に生じるその他すべてのペナルティ(危険走行など)も日曜日に適用される。そしてシュートアウトで生じるあらゆるペナルティはスプリントで適用され、スプリントで生じるあらゆるペナルティは日曜日に適用される。これはかなり大きな意味を持つ。17周で争われるバクーでのス...
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