2026年F1第8戦オーストリアGPは、メルセデスのジョージ・ラッセルがポールポジションからスタートする。しかし、レッドブル・リンクではポールポジションが勝利を保証するわけではない。高いタイヤデグラデーション(性能劣化)と路面温度55℃に達する酷暑が予想されるなか、決勝では2ストップ戦略が基本となる一方、状況次第では3ストップ戦略も有力な選択肢となる可能性がある。
2ストップが本命 ハードタイヤ2セットが鍵ピレリのシミュレーションでは、最速戦略は「ミディアム→ハード→ハード」の2ストップとされている。この戦略では1回目のピットストップを17~24周目、2回目を44~52周目に行うのが理想とされる。この戦略を実行できるのはハードタイヤを2セット温存している7台で、偶然ではなく、その7台はいずれもグリッド上位7台を占めている。一方で、マックス・フェルスタッペンは異なる選択肢を残している。新品ハード2セットに加え、新品ミディアム2セットも温存しており、「ミディアム→ハード→ミディアム」の2ストップも選択可能だ。この戦略では18~24周目と44~50周目でのピットインが想定されている。同様の戦略はトップ10に入った他のレッドブル陣営のマシンにも用意されている。高温で3ストップ戦略も現実味10日前の予測では1ストップと2ストップの差はわずかだった。しかし現在は状況が大きく変化している。オーストリアは現在、ヨーロッパを襲う熱波の影響を受けており、決勝日は気温34℃、路面温度は55℃前後まで上昇する見込みだ。こうした高温条件ではタイヤ摩耗が大きく増加し、デグラデーションは前戦バルセロナ・カタルーニャGPとほぼ同水準になるとピレリは分析している。その結果、1ストップは現実的な選択肢からほぼ消え、3ストップが2ストップと互角、純粋な計算上ではわずかに速い戦略となっている。ただし、ピレリのモータースポーツディレクターであるダリオ・マラフスキは、交通状況など実際のレース要素を考慮すると3ストップは約5秒不利になると説明している。3ストップ戦略が現実味を帯びる最大の理由は、強力なアンダーカット効果にある。タイヤ劣化が大きいレースでは、新品タイヤへ早めに交換することで一気にポジションを奪える可能性が高まる。誰かが早めに動けば、それに対抗する形で各チームが次々とピットへ向かう「ピットストップ合戦」が始まる可能性もある。近年のレッドブル・リンクはオーバーテイクが多いサーキットだったが、今年は従来の3か所のDRSゾーンに代わってオーバーテイクモードが導入される。その効果は未知数であり、追い抜きやすさによって戦略も大きく左右されそうだ。アンダーカットが戦略を左右後方勢はソフトスタートも有力今年のC5ソフトタイヤは昨年より耐久性が向上しており、今週末はグレイニングやブリスターの兆候も確認されていない。そのため、2025年にニコ・ヒュルケンベルグが最後尾から9位まで追い上げたような「ソフト→ミディアム→ハード」の2ストップも魅力的な選択肢となる。この場合、1回目のピットは14~20周目、2回目は39~45周目が理想とされる。スタート時の高いグリップを生かせるため、後方グリッドだけでなく順位アップを狙うドライバーにとっても有効な戦略となる可能性がある。決勝は2ストップが基本戦略となる見通しだが、高温によるタイヤ摩耗、アンダーカット、オーバーテイクモードの効果など複数の要素が絡み合う。レース展開次第では3ストップへ切り替えるチームが現れ、戦略勝負がレース結果を大きく左右する一戦となりそうだ。