第11戦F1オーストリアGPで勝利を収めたのはランド・ノリスだったが、レッドブル・リンクを後に笑顔を見せたのは彼だけではない。予選から決勝まで随所にバトルが見られ、上位勢から中団グループまで多くのドラマが生まれた一戦となった。その一方で、レッドブルにとっては悪夢の週末に。マックス・フェルスタッペンは1周目での接触により無得点、角田裕毅も接触ペナルティで16位と沈み、チームとして77戦続いていたポイント獲得記録がついにストップした。
F1プレゼンターのローレンス・バレットが、今大会の「勝者」と「敗者」を選出した。勝者:ランド・ノリスカナダでのチームメイトとの接触を経て、ノリスは週末を通じて圧巻のパフォーマンスを披露。予選では2度もポールに値するタイムを叩き出し、2本目は他をコンマ5秒も引き離す驚異の一撃となった。決勝ではオスカー・ピアストリの猛追を抑えて今季3勝目、キャリア通算7勝目を達成。ドライバーズランキングでは首位のピアストリとの差を15ポイントに縮め、地元イギリスGPへ弾みをつけた。ランド・ノリスがオーストリアGPで今季3勝目を挙げた敗者:マックス・フェルスタッペン過去5戦連続でポール・トゥ・ウィンを飾ってきたレッドブル・リンクだが、今回はグリップ不足に苦しみ予選は7番手。決勝ではターン3でキミ・アントネッリに追突され、まさかの1周目リタイア。これでポイント連続獲得は31戦でストップ。今季2度目のDNFとなり、ピアストリとの差は61ポイントにまで広がった。勝者:フェラーリ大幅アップグレードを投入したフェラーリは、今大会でマクラーレンに次ぐ2番手勢力に浮上。シャルル・ルクレールは予選2位、ルイス・ハミルトンもミスがなければ前列を狙えたと語った。決勝では両者とも安定した走りで3位と4位を獲得。チームはメルセデスを1ポイント上回ってコンストラクターズ2位に浮上した。ルクレールが表彰台を獲得し、ハミルトンは今季ベストタイの4位で続いた敗者:メルセデス気温50℃超という灼熱のコンディションに苦しみ、カナダでの勝利の再現とはならなかった。ジョージ・ラッセルは孤独な5位走行に終始し、アントネッリはスタート直後にフェルスタッペンとの接触でリタイア。新人アントネッリはこれで直近5戦中4戦がノーポイント。次戦ではグリッド3番降格ペナルティを受ける。勝者:リアム・ローソンレッドブルの昇格から再びレーシングブルズに戻ったローソンだが、今季最高の走りを披露。予選では6番手と「レッドブル系最上位」に位置し、決勝でも巧みな1ストップ戦略で自己最高の6位入賞。これで今季2度目のポイント獲得。F2で注目を集めるアービッド・リンドブラッドに対するアピールにもなった。敗者:ウィリアムズ悪夢のような週末。カルロス・サインツは3戦連続のQ1敗退というキャリア初の不名誉記録を更新し、決勝前にはブレーキ火災でDNS。アレックス・アルボンは好スタートを見せたものの、マシントラブルで3戦連続リタイア。チームは無得点で終えた。勝者:ガブリエル・ボルトレト昨年F2で勝利した地で、今季ルーキーの中でも最も充実した週末を過ごした。予選では初のQ3進出、決勝では堂々の8位入賞で初ポイントを獲得し、ファン投票で「ドライバー・オブ・ザ・デイ」に選ばれた。F1初入賞を果たし歓喜するガブリエル・ボルトレトザウバーにとっても2001年のキミ・ライコネン以来となるこの地でのベストリザルト。ブラジル人ドライバーとしてはフェリペ・マッサ以来8年ぶりのポイント獲得となった。敗者:角田裕毅プラクティスでは好調を示したが、予選では再びQ1敗退で18番手スタート。決勝では順位を上げるも、フランコ・コラピントへの接触で10秒ペナルティ。結果、完走者中最下位の16位。レッドブルとしてはフェルスタッペンとともにノーポイントに終わり、77戦続いた得点記録がついに途切れた。勝者:フェルナンド・アロンソQ3進出は逃したが、決勝では1ストップ戦略を完璧に遂行。連続して7位入賞を果たし、これで3戦連続のポイントフィニッシュ。チームメイトのランス・ストロールと並び14ポイントに到達した。アロンソが巧みな戦略で連続ポイントを獲得敗者:アルピーヌ日差しの強いオーストリアで、アルピーヌは全体的に厳しい週末に。ピエール・ガスリーは序盤こそポイント圏内を走行するも、グリップの低下で失速。フランコ・コラピントは角田に追突されダメージを受け、さらにピアストリを周回遅れにする際には進路を塞ぐ場面もあった。結局チームは無得点で終え、前を行くライバルたちが軒並み加点したことで痛い一戦となった。