アストンマーティンのエイドリアン・ニューウェイが、ホンダの2026年F1パワーユニット開発を巡る状況に大きな影響を与えた可能性が浮上している。F1では2026年から新たなPUレギュレーションが導入されたが、ホンダは開幕前から深刻な課題を抱えていると伝えられていた。そんな中、FIAは5月に開発支援制度「ADUO(Additional Development and Upgrade Opportunities)」を拡充し、新たな救済枠を設けた。
ホンダ向けとも言われる新たな救済措置ADUOは2026年に導入された制度で、メーカー間の性能差が長期間固定化されることを防ぐことが目的だ。従来は基準エンジンから2%以上遅れているメーカー向けの支援枠と、4%以上遅れているメーカー向けのより大きな支援枠の2段階が用意されていた。しかしFIAは今月、この制度に新たなカテゴリーを追加。基準性能から10%以上遅れているメーカーに対して、さらに大きな開発支援を与えることを決定した。パドックでは、この措置は事実上ホンダを念頭に置いたものだとみられている。メルセデスが2026年型PUのベンチマークと考えられている一方、プレシーズン段階ではホンダが約80馬力以上遅れているとの推定もあった。今回の制度変更により、ホンダは開発予算上限が数百万ドル規模で引き上げられ、性能向上に向けた追加開発が可能になった。ニューウェイ発言がパドックで波紋こうした流れの背景として注目されているのが、ニューウェイが開幕戦オーストラリアGP前に行った異例の発言だ。ニューウェイは当時、アストンマーティンとホンダが直面している問題について非常に率直に語った。特にバッテリー不足については「恐ろしい」と表現し、さらにPU由来の振動が深刻で、ドライバーが長時間走行すると神経への影響が懸念されるレベルだと明かした。通常、こうした技術的な問題はチーム内部に留められることが多いため、パドック関係者の間では大きな話題となった。アストンマーティン内部でも「話し過ぎではないか」と受け止める声があったとされる。意図的な“危機アピール”だったのか一方でパドックでは別の見方も存在する。ニューウェイは当初のADUO制度だけではホンダの立て直しには不十分だと考えており、FIAや関係者に追加支援の必要性を認識させるため、あえて問題の深刻さを強調したのではないかという見方だ。実際、ニューウェイはメディア露出が極めて少ない人物として知られる。そのニューウェイが自ら詳細な問題点を語ったことで、ホンダの置かれた厳しい状況は一気にF1界全体へ共有された。結果としてFIAは新たな救済カテゴリーを創設し、ホンダは追加予算を獲得した。もちろんニューウェイの発言と制度変更の因果関係が公式に認められているわけではない。しかしパドックでは「ニューウェイが意図的に流れを作ったのではないか」という見方が広がっている。ホンダの逆襲はここから始まるか興味深いのは、ホンダがこれまで性能向上よりも信頼性対策を優先してきたとみられている点だ。今回の追加支援によって開発余力が生まれれば、本格的なパフォーマンス改善に着手できる可能性がある。かつてマクラーレンとの苦闘を経て、レッドブルとの黄金期を築いたホンダは、一度大きく出遅れた状況から巻き返した前例を持つ。2026年の苦戦が一時的なものに終わるのか。それともアストンマーティンとの新プロジェクトが長期的な苦戦に陥るのか。ニューウェイの“マスタープラン”が真価を発揮するかどうかは、今後数カ月の開発成果によって明らかになりそうだ。Source: F1 OVERSTEER