アストンマーティンのマネージング・テクニカル・パートナーとして新体制を率いるエイドリアン・ニューウェイは、2026年の新レギュレーション導入に向けた準備を加速させている。チームの文化や人材を把握する中で、彼はかつてレッドブル加入当初に感じた「自己不信」と「惰性」の空気に似た“デジャヴ”を覚えたという。ニューウェイは今年、レッドブル退任後にアストンマーティンへ移籍し、チームの株主でもある新職「マネージング・テクニカル・パートナー」に就任。
ターゲットは明確に2026年――新しいシャシーおよびパワーユニット規定が導入される年だ。アストンマーティンは新ファクトリーや風洞施設などに巨額投資を行っており、タイトル争いへの準備を進めている。ニューウェイはこれまでF1で通算26度の世界タイトルに関与しており、その経験から“成功を妨げる文化的課題”を語った。「レッドブル初期と同じ空気がある」「3月に仕事を始めたばかりで、まだ判断するのは難しい」とニューウェイは語る。「2026年のような大きなレギュレーション変更があると、すべてがリセットされる。たいていは、今年のトップチームが来年もトップにいるものだが、ときには混乱も起きる。2009年にはフェラーリとマクラーレンが苦戦し、ブラウンGPとレッドブルが前に出た。そういうことは起こる」「ただ正直に言えば、今自分たちが良いのか悪いのか、全く分からない。なぜなら他のチームが何をしているのかを知る術がないからだ」そして話題は「チーム文化」へと移る。「レッドブルに入ったとき、そこはフォードの管理下にあったジャガーの残骸のような状態だった。長年勝てなかったことで、チーム内には『自分たちは勝てない』という諦めが蔓延していた。自己不信が広がると、怠惰や惰性が生まれ、責任転嫁の文化まで育ってしまう。それを覆すのは本当に大変だった」「多くは言わないが、いまアストンマーティンにも少し“デジャヴ”を感じている」「3つの部門を一体化させることが鍵」ニューウェイは、F1チームを構成する「3つの柱」――空力、メカニカルデザイン、ビークルダイナミクス(車両挙動・シミュレーション)の連携が勝利の鍵だと指摘した。「F1チームはどこも似たような構造だ。空力、メカ設計、そしてビークルダイナミクスの3部門がある。この3つをいかに一体化させるかが絶対的に重要だ。空力的に素晴らしいマシンでも、構造が十分に剛性を持っていなければ意味がない」「いまのF1ではテスト時間が非常に限られているため、開発の多くは数値シミュレーションに頼っている。だからこそモデルの精度と、それを“盲信しすぎないこと”が重要なんだ」彼は長年、手書きノートを愛用する“アナログ派”として知られており、現代の「コンピュータ依存」への警鐘も鳴らした。「シミュレーションは便利だが、完璧ではない。人はいつの間にか、コンピュータが吐き出す数値を疑わなくなる。だが、誤った入力をすれば誤った結果が出るのは当然だ。問題はコンピュータではなく、入力する人間側にある」「この“問いを持たない姿勢”こそが、いま多くのチームが陥っている惰性の正体なんだ」2026年、アロンソ&ストロール体制で挑む新時代へアストンマーティンは2026年もフェルナンド・アロンソとランス・ストロールのラインアップを維持する。新エンジン規定下で迎える新時代、ニューウェイが率いるテクニカル再編とチーム文化の改革が実を結ぶかが注目される。ニューウェイ体制の焦点:アストンマーティンは何を変えられるのかニューウェイの発言から浮かぶのは、「技術よりも文化の再構築が最大の課題」という点だ。レッドブルが2006〜2010年にかけて成し遂げた進化は、彼が導入した組織横断型の開発体制と、メンバーの“勝つ意志”の再燃によって生まれた。アストンマーティンはすでにハードウェア投資(新風洞・新工場)を完了しているため、次のステップは「人と文化の結束」だ。ニューウェイがレッドブル時代に見た“惰性の壁”を、今回はどれほど早く乗り越えられるか。2026年のアストンマーティンは、単なる技術刷新ではなく、信念の再構築プロジェクトとしてスタートラインに立つことになる。
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