エイドリアン・ニューウェイが、昨年レッドブルを離脱した後にF1にとどまる決断に至った経緯と、その背景にあった選択肢について明かした。ニューウェイは現在、アストンマーティンに加入し、2026年の新レギュレーション時代に向けてシルバーストーン拠点のチームとともに次世代マシンの開発に取り組んでいる。先日のモナコGPでは、同チームの一員として初めて現地でのレースに帯同した。
約20年にわたり在籍し、13回のドライバーズ&コンストラクターズタイトル獲得に貢献したレッドブルを離れる決断に至った理由、そしてその後の進路について、ニューウェイはこう語る。「レッドブルを辞めたのは、実にさまざまな理由があった。正直に言って、その時点では次に何をするかなんて全く決めていなかった」とニューウェイはSky Sports F1に語った。「それでしばらくは座って考えた。妻のマンディと一緒に、これからどうするか話し合った。ビーチでマルガリータでも飲みながらのんびり過ごす、なんて案もあったし、もう一度仕事をする、という案もあった」「でも、もし仕事をするなら、それはどんなものがいいのか?」アメリカズカップにも関心、しかし“修正不能な競技体系”に難色レッドブル・テクノロジーズがアメリカズカップ(ヨットレース)に関与していたこともあり、ニューウェイは一時期その道も検討したという。「アメリカズカップは非常に面白くて、F1とかなり似た世界なんだ。使われる技術も非常に近い」とニューウェイ。「ただ、私が好きじゃなかったのは“やり直しが効かない”ところ。大会は4年に1度しかないし、実際にボートを水に浮かべてから本番まで2カ月程度しかない。だから、もし最初の設計がうまくいかなかったら、挽回する時間がないんだ」「F1なら、シーズン序盤にうまくいかなくても、マシンの基本的な設計やエンジン、ドライバーが優れていれば巻き返すことができる。マクラーレンがまさに良い例だ」ロードカー開発の継続も、「変化の遅さ」に不満ニューウェイはアストンマーティン・ヴァルキリーやRB17プロジェクトを通じて、公道車両の開発にも関わってきたが、その分野に完全に移るという選択肢は選ばなかった。「ロードカーはずっと関心があったし、ヴァルキリーやRB17のプロジェクトには今でも関わっていて楽しんでいる」と語る。「でも私がこのキャリアで愛してきたのは、“人とマシンの競争”という側面、つまりスポーツ的な挑戦だ。毎週、あるいは今ではもっと頻繁に、自分たちの成果が世に問われるんだ」航空宇宙業界も候補にあがるも、「即時性の欠如」に違和感F1とは異なる分野として、航空機開発などのエアロダイナミクス分野にも関心はあったというが、長い開発スパンが性に合わなかったという。「大学時代の友人の中には、航空宇宙分野に進んで英BAE(ブリティッシュ・エアロスペース)やロールス・ロイスで働いている人もいるけど、彼らが手掛けているプロジェクトって、自分の関わった機体が実際に飛ぶまでに10~15年かかるんだ」「そうなるとフィードバックがほとんどない。それに比べると、やっぱり私は“人とマシン”の競争、つまりF1のように即時に結果が出て、その結果をもとに改善を繰り返していける環境が自分には必要なんだと感じた」