アストンマーティンF1チームでの生活が始まって2カ月。率直な語り口で人気のインタビューシリーズ「UNDERCUT」最新号で、F1界随一のカーデザイナーが新天地についての本音、2026年レギュレーションに潜む革新の可能性、そしてランス・ストロールとフェルナンド・アロンソの思考に入り込む必要性を語った。エイドリアン・ニューウェイは、ただ自分自身であり続けている。彼は製図板に向かい、自動芯出しの鉛筆を手に、目の前のA0サイズの紙に完全に没頭している。
このインタビューはスケジュールに記載されており、本来なら15分前に始まっているはずだった。他の誰であれば、丁寧に声をかけて中断させるところだろう。しかし、相手はエイドリアン・ニューウェイだ。彼は「5%のインスピレーションと95%の努力」でF1の設計を行うという考えを強く持っているが、もし今がその「5%」の瞬間だとしたら? あなたはそれを邪魔したいだろうか? 決してそうは思わない。幸いなことに、彼はトランス状態のような集中からふっと目を覚まし、AMRテクノロジー・キャンパスのオフィスから出てきて、3月のチーム加入以来初となるインタビューに臨む準備を整えた。エイドリアン・ニューウェイのキャリアは、すでに5つ目の10年に突入している。スポーツカーやインディカーの設計でも成功を収めてきたが、彼の名声を決定づけたのはF1における実績だ。35年にわたり、彼は勝利を重ねるマシンを、そしてしばしば支配的な強さを誇るマシンを設計してきた。F1デザイン界の歴史に名を連ねる中で、彼のキャリアの長さと、それに伴う膨大なトロフィーの数が、彼を他の偉人たち――フォルギエリ、チャップマン、バーンといった名前――と肩を並べさせ、あるいはそれを凌駕する存在へと押し上げた。そのような名前と比較する方が、むしろ現代の設計者たちと比べるよりもしっくりくるかもしれない。ニューウェイは、敬意をこめて言えば“古き良き時代”の設計者だ。F1において、車全体を「描く」スキルを磨いた最後の設計者であり、数人で食事を囲めるような小規模チームで働いた最後の世代の人物である。しかし彼は、そうした時代の手法を今に持ち込みながら、同時に現代の分業化された開発体制――数百人のスペシャリストたちが、それぞれの領域で設計を行う現代F1――をマネージできる数少ない存在だ。その両方の世界を理解し、橋渡しできることこそが、彼のキャリアを唯一無二のものにしている。栄光の頂点に立つ者が受ける称賛。それは、ニューウェイにとってあまり居心地の良いものではない。実際、彼はそうした称賛をあまり好まない。ただ、彼が心から好むのは、工学的な新たな課題への挑戦であり、それに共鳴する仲間たちと協力して取り組むことである。彼がアストンマーティンのマネージング・テクニカル・パートナーに就任して2カ月。今回の「UNDERCUT」インタビューでは、ニューウェイがチームの現状をどう見ているか、今後成功するために必要なことは何か、そしてシャシーとエンジンのレギュレーションが同時に変わるという前例のない状況に、彼がどう備えているかについて、率直に語ってくれた。加えて、自身のこれまでの歩み――なぜ彼がその世代でも、あるいはあらゆる世代でも最高のF1デザイナーと見なされているのか――にも深く踏み込んでくれている。まず最初に伺いたいのですが、「マネージング・テクニカル・パートナー。という肩書にはどういった意図があるのでしょうか? F1界でも新しい役職名ですよね。ローレンス・ストロール(会長)と将来について話し合っていたとき、彼が“マネージング・テクニカル・パートナー”という肩書を提案してくれたんだ。ローレンスは非常にありがたいことに、私のことを信頼し、技術部門のパートナーとして迎えてくれた。つまり私は、チームの技術的側面を開発し、私たちのエンジニアリング能力をさらに前進させるための役割を担っているんだよ。すでに2カ月在籍されていますが、想像していた通りのチームでしたか?新しいチームに加わるときって、実際にどんな体験になるかは入ってみないとわからないものなんだ。これまでにも何度かチームを移ったことがあるけど、それぞれまったく違う文化や雰囲気があった。今回のチームについてまず言えるのは、皆がとても温かく迎えてくれたということ。これは素晴らしいことでね。私が過去に入ったチームすべてがそうだったわけではないから。このチームは、非常に短期間のうちに人員を大幅に増やしてきた歴史がある。その点ではとてもユニークだ。設備も非常に充実しているし、人々も意欲的で情熱がある。だから私たちの仕事は、そうした人材や設備をうまく機能させ、すべてが円滑に回るようにすることなんだ。F1というのは、確かに高度なテクノロジーの世界だけど、結局のところ、それを動かしているのは“人”なんだよ。勝つことが当たり前ではなかったチームに、“勝者のマインドセット”を植え付けるにはどうすればいいと考えますか?勝者のマインド――それはとても難しいものだ。もしチームが長年にわたって成功を経験していなければ、“勝たない”という状態がある種の“日常”になってしまう。だからこそ、『自分たちには勝つ力があるんだ』と、皆が心から信じられるようにする必要がある。それが“前へ進む”ということの一部だ。ただ、私は“鼓舞するタイプ”の人物ではない。アメリカンフットボールの監督のようにチームの前に立って熱く語る……そんなスタイルではないんだ。私は、みんなと一緒に働きながら、一緒に学び、共に成長していくタイプなんだよ。では、“模範を示す”という形でリードすることはありますか?私の仕事の仕方には、2つのアプローチがあるんだ。ひとつは、私たちのクルマをどうすればもっと速くできるかを考えること。つまり、レギュレーションを読んで、ドライバーたちと話して情報を集めて、そして製図板に向かって解決策を提案する。これが“設計者”としての側面だね。もうひとつは、エンジニアリング部門の人たちと一緒に働くこと。彼らの作業を見たり、彼らのアイデアについて議論したりしながら、チーム全体として前に進んでいくこと。この2つが私のやり方なんだよ。AMRテクノロジー・キャンパスにはF1で最先端のシミュレーターや風洞がありますが、それはF1界の最高の設計者にとって“究極の遊び場”と言えますか?ローレンスの構想によって、F1の中でも最高の施設が実現されたと思う。けれど大事なのは、それをどう使うかなんだ。私が以前いたチームには、F1でおそらく最悪レベルの風洞があったし、建物もごく普通の工業団地にあるような施設だった。それで...
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