2025年F1シーズン、レッドブル・レーシングはマックス・フェルスタッペンの隣に誰を置くべきかという、長年続く問いに改めて直面した。その結論としてシーズン途中から起用された角田裕毅は、最終的にフェルスタッペン385点に対し30点という、F1史上最大のチームメイト間ポイント差を記録することになる。この数字は、果たして角田裕毅の実力を正しく反映したものなのだろうか。
レッドブルのドライバー選考という特異な哲学多くのチームは可能な限り最強の2人を揃えようとする。フェラーリが2023年時点で十分に競争力のあるラインアップを持ちながら、ルイス・ハミルトン獲得のためにカルロス・サインツJr.を放出したのは、その典型例だ。これに当てはまらない例外が2つある。ひとつはオーナーの息子が長期にわたりシートを保持するアストンマーティン。もうひとつがレッドブルである。彼らは若手育成を最優先し、そのために姉妹チームを所有するという、他に類を見ない戦略を採ってきた。その結果、セバスチャン・ベッテル、そしてフェルスタッペンという歴史的才能を輩出している。“呪われた2台目”と続く失敗ベッテルの後、ダニエル・リカルドがフェルスタッペンの台頭を前にチームを去って以降、レッドブルは2台目のシートを安定させることができていない。ピエール・ガスリー、アレクサンダー・アルボン、リアム・ローソン、そして角田裕毅。短期間で多くのドライバーが入れ替わった。唯一長期間シートを守ったのはセルジオ・ペレスだが、彼はレッドブル育成出身ではなかった。しかも2024年後半には、予選でフェルスタッペンに常に数コンマ遅れる状況が常態化し、チーム得点の大半をフェルスタッペンひとりが稼ぐ構図になっていた。2025年、交代の効果はあったのか2025年、ペレスをローソン、そして角田裕毅に替えても状況は大きく改善しなかった。角田裕毅の予選一発の速さは、数値上ペレスと大差はなく、シーズン序盤はむしろ差が大きかった。ローソンも未経験サーキットでの2戦のみで降ろされており、比較は難しい。さらに角田裕毅はイモラでの高速クラッシュにより、修復の都合で旧仕様パーツを長く使わざるを得なかった。結果としてフェルスタッペンとのラップタイム差は、僅差のフィールドでは致命的なものとなり、フェルスタッペンがフロントロー争いをする一方で、角田裕毅はQ1敗退に沈む場面が増えた。これはシーズン後半、フェラーリ勢など他チーム内でも見られた現象だった。チームプレーと数字に残らない役割角田裕毅もペレス同様、チームのためにレースを組み立てる役割を担った。予選で後方に沈むことで戦略的な価値を発揮できない週末も多かったが、メキシコやアブダビではフェルスタッペンを助ける形でチームプレーを果たしている。それでも最終成績だけを見れば、30点対385点という数字はあまりに厳しい。22戦を共に戦ったチームメイト同士としては、前例のない差だ。もし条件が違っていたらもし角田裕毅がRB21で開幕から走り、プレシーズンテストにも参加していたら結果は違ったのか。あるいはローソンを継続起用していれば、差は本当にもっと小さかったのか。答えは出ない。ただひとつ言えるのは、2025年のレッドブルによる不可解なドライバー交代が、両者の評価を大きく歪めたということだ。皮肉にも、2026年F1シーズンのシートを失ったのはローソンではなく角田裕毅であり、チームが彼に一定の信頼を残していることも示唆されている。2025年の数字は忘れるべきか角田裕毅にとっても、ローソンにとっても、2025年は実力を正当に示す環境ではなかった。将来、この年の成績表だけを見て彼のキャリアを評価しようとするなら、それは大きな誤解を生むだろう。フェルスタッペンの隣という特異なシートで記録された“史上最低得点”は、ドライバー個人の価値を測る指標としては、あまりに不適切だったと言える。
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