角田裕毅は、2025年F1メキシコGP決勝で惜しくも11位に終わり、ポイントを逃した。自身としては力強い走りを見せたが、「自分ではどうにもできない要因」で結果を失ったと語り、チームの戦略判断に不満を示した。レッドブル・レーシングの角田裕毅は10番グリッドからスタートし、レース中盤にはトップ5に浮上した。しかし、チームはマックス・フェルスタッペンのピット戦略をカバーするため、角田を“盾”として使う判断を下した。
レース後、角田裕毅は自身の走りには満足しているとしつつも、悔しさをにじませた。「今日は普通に走ればポイントは簡単に取れたと思います。おそらく6位か7位は可能だったと思うんですけど、自分ではどうにもできないところでポイントを失ってしまいました。正直、自分のパフォーマンス自体はかなり良かったと思いますし、やれることは全部やったつもりです。だからすごくフラストレーションが溜まりますね」と角田裕毅は語った。「フェルスタッペンと大差なかった」 今季最高のレースペース角田裕毅は今回のメキシコGPで、「レッドブル加入後で最も良いロングランペース」を示せたと振り返った。第1スティントではフェルスタッペンとほぼ同じペースで走行しており、それだけに結果が伴わなかったことを「非常に残念」とした。「最初のスティントではマックスからそんなに離れていませんでしたし、ほぼ同じようなペースで走れていたと思います。彼はP3でフィニッシュしましたけど、僕もそこまで遠くはなかったんです。だから本当に残念です。ピットストップのタイミングと作業で全部が崩れてしまいました。でも、今日の走り自体はすごく良かったと思いますし、レッドブルでこれまでに見せた中で一番のロングランペースだったと思います」と角田裕毅は語った。実際、予選ではフェルスタッペンとの差がQ2でわずか0.211秒。決勝の第1スティントでも、タイヤの摩耗を考慮すれば差はごく僅かだったとされる。メキース「数ポイントを失ったが、彼は成長している」レッドブルF1代表ローラン・メキースはレース後、「我々は少し彼を引っ張りすぎた」と戦略上のミスを認めた。「ユウキは非常に強力な週末を過ごした。予選ではマックスとの差が0.2秒、決勝の第1スティントでもほぼ同じだった。我々はチームとして少し長く引っ張ったが、それはマックスのために有利な判断だった。結果として、ユウキは数ポイントを失ったが、それは彼が実力で稼いだものだった」「我々はドライバー選考を急いでいない。ユウキは進歩を見せているし、他の若手も同じだ。彼らに十分なチャンスを与え、最良の判断を下すつもりだ」残留問題は依然不透明 メキース「決定を急ぐ必要はない」角田裕毅は今季ここまで28ポイントを獲得しており、シーズン後半戦で安定した結果を残している。しかし、2026年の去就は依然として不透明なままだ。チームメイト候補としてレーシングブルズのアイザック・ハジャーが有力視されており、角田の残留は微妙な状況にある。ただし、チーム代表ローラン・メキースは「まだ何も決まっていない」と強調しており、現在はコンストラクターズ選手権の戦いに集中しているという。現在レッドブルは4位で、メルセデスに9点、フェラーリに10点差で迫る接戦の中にいる。レッドブルの難題:次世代昇格と2026年ラインナップレッドブルは当初、この時期に2026年のドライバー体制を発表する予定だったが、決定は先送りされている。理由は二つある。一つは、フェルスタッペンのチームメイトを任せられるだけのドライバーが見つからないこと。過去7年間、ピエール・ガスリー、アレクサンダー・アルボン、セルジオ・ペレス、リアム・ローソン、そして角田裕毅までもが、その壁を越えられていない。もう一つは、ジュニア世代の急成長だ。レーシングブルズで活躍するアイザック・ハジャーは昇格候補筆頭で、さらにF2で現在7位のアービッド・リンドブラッドも強烈な印象を残した。リンドブラッドは今回のFP1でフェルスタッペンのマシンをドライブし、他のルーキー勢を0.7秒上回った。メキースも「非常に冷静で正確な仕事をした。ミスなく、車を壊さず、すばらしいパフォーマンスだった」と絶賛している。分析:角田裕毅の評価を分けた「チーム内力学」今回のメキシコGPは、角田裕毅がフェルスタッペンに次ぐ強力なレースペースを披露しながらも、チームの“優先順位”によって結果を失った象徴的な一戦だった。戦略的犠牲の役割を担ったことでポイントを逃したが、走りそのものはシーズン中でも最上位クラス。特に第1スティントでの安定したラップタイムは、レッドブルのマシンを完全に使いこなせている証拠だった。今後の焦点は、チームがフェルスタッペン体制を強化する中で角田の位置づけをどう再定義するかにある。メキースが主張する「決定を急がない」という発言は、角田の実力を見極めるための最後のチャンスを与えているとも言える。残り4戦での安定したポイント獲得が、角田の2026年シートを左右する決定的要素となりそうだ。