シーズン中盤、角田裕毅の姿から“あの笑顔”が消えて久しい。RB21の扱いづらさ、期待の重圧、そしてトップチームでのプレッシャー。そんな苦難に直面する角田裕毅にとって、ローレン・メキースがレッドブルのトップに就任したことは、ひとつの転機となるかもしれない。
開幕からわずか2戦でリアム・ローソンと交代し、晴れてレッドブル昇格を果たした角田裕毅だったが、ここまでの獲得ポイントはわずか7。オーストリアGPでは2周遅れの最下位に沈み、その表情には疲弊の色が濃くにじんでいた。角田裕毅を“信じる”新代表メキースは以前から角田裕毅に対して高い評価を公言しており、F1の75周年記念イベントでは次のように語っていた。「裕毅は昨年、大きな飛躍を遂げた。純粋な速さと技術的な能力の両面で、我々を驚かせる進歩を見せてくれた。昨シーズン、彼は“非常に優れたドライバーたち”の仲間入りを果たしたと言えるだろう。次のステップがあるかどうか?我々はあると信じている」また、レーシングブルズ時代のパフォーマンスについてもこう評価していた。「彼の今年の成長は、誰にとっても驚きだったと思う。そしてその驚きは、レッドブル・レーシングにも届いたはずだ。この世界では誰もが結果を見て判断する。ドライバーが期待を超える走りをすれば、人々の見方はすぐに変わるものだ」「我々は、彼により速いクルマを与えたいと思っている。彼は、より速いマシン、より大きなチームにふさわしい存在だ」プレッシャーのなかで失われた“らしさ”レッドブルのドライバーである以上、角田裕毅はチーム内部からの期待と厳しい評価の両方を受けている。これまで彼は、ヘルムート・マルコやクリスチャン・ホーナーの支援を受けてきたが、その環境が必ずしも“自由”ではなかったことは想像に難くない。RB21の根本的な課題が即座に解決することはないにしても、メキースの就任により、チーム内の空気やマネジメントスタイルが変化する可能性がある。それは、角田裕毅が自らの“らしさ”を取り戻すための第一歩となり得る。笑顔が戻る日を信じてベルギーGPで予定されているアップグレードは、技術的な改善に加え、心理的にも角田裕毅にとっての“希望の兆し”となるだろう。マシンに対する信頼感、チームからの支援、そして代表からの確かな期待――そのすべてが噛み合ったとき、あの“いたずらっぽい笑顔”が再びパドックに戻ってくるかもしれない。その日を信じて、角田裕毅は前を向く。