フォルクスワーゲンは、WRC第3戦ラリーメキシコに2台のポロ R WRCで参戦し、フランス人のセバスチャン・オジェが前戦ラリースウェーデンに引き続き今シーズン2勝目を獲得した。7日(木)に開幕したラリーメキシコは、メキシコ中部の都市レオンを起点として開催される今年初のグラベル(未舗装路)ラリーとなった。
初開催は2004年。メキシコが他のラリーと一線を画するのは、競技区間(スペシャルステージ、通称:SS)が 2,000m前後の高地で行なわれること。空気中の酸素濃度が薄いためエンジン出力が 20%近くも低下してしまい、沸点の低下によりブレーキのオーバーヒートなども発生しやすくなる。一方で気温は30℃を超えることもあり、人にも車両にも厳しいラリーとなっている。初参戦となるフォルクスワーゲンは 2012年末にメキシコでテストを行い、準備を万端にして2台の「ポロ R WRC」で出走。フィンランド人のヤリ‐マティ・ラトバラとフランス人のセバスチャン・オジェの二人がこの難関に挑戦した。7日の午前中に行われた予選では、セバスチャン・オジェが 5 番手、ヤリ‐マティ・ラトバラが 9 番手タイムを獲得。グラベルラリーは路面状況がタイムに影響する場合が多く、出走順によって有利不利があるため、2012年からラリーのスタート前に予選セッションを設け、タイムの良かったドライバーから好きな出走順を選択できる方法が採られている。メキシコではホコリの掃けた後方の出走順が有利なため、セバスチャン・オジェは9番手、ヤリ‐マティ・ラトバラは7番手をそれぞれ選択。予選トップの選手は上位陣最後尾となる13番手の出走を選択していたため、不利な状況での戦いが予想された。競技は7日の夜にユネスコ世界遺産である古都グアナファトの市街地コースからスタート。この日はセバスチャン・オジェが SS2でトップタイムを獲得し総合首位に躍り出ました。本格的な未舗装路が始まった8日も、セバスチャン・オジェは不利と目された出走順ながら首位を快走。一時は総合2 番手となるもすぐに逆転し、総合首位に復帰た。一方のヤリ‐マティ・ラトバラは SS3 で路上の岩に接触し、サスペンションを破損。この日の競技続行を断念する事態となった。また9日には、セバスチャン・オジェの走行中に SS途中の門が閉められてしまうというアクシデントが発生。セバスチャン・オジェは約30秒を失ったが、ライバルもパンクで遅れるなど波乱の展開となり、結果的に3分近い差をつけて首位を守ることに成功した。また、競技最終日の10日(日)には、このアクシデントに対する主催者の救済措置もあり、2番手の選手と3分30秒以上の差がついた。しかし、セバスチャン・オジェは気を緩めることなく、最終SSのひとつ前、SS22に設定されたボーナスポイントが加算される「パワーステージ」もトップタイムで通過し、3点を獲得。セバスチャン・オジェは続く最終SSもトップタイムを記録し、第2戦「ラリースウェーデン」に続く勝利をフォルクスワーゲンにもたらし。これでセバスチャン・オジェは、優勝の25点とボーナス3点の計28点を獲得。選手権ポイントを計74 点とし、首位を独走している。また、セバスチャン・オジェは23ヵ所のSSのうち16ヵ所のSS でトップタイムを刻み、「ポロ R WRC」の速さを全世界に強く印象づけた。また、再出走を果たしていたヤリ‐マティ・ラトバラも「パワーステージ」で3番手タイムとなり、ボーナスポイント1点を得ている。次戦は4月11日(木)の第4戦「ラリーポルトガル」です。晴れればホコリがひどく、雨が降れば非常に滑りやすくなるため、出走順選択の影響が大きいグラベルラリー。また、次戦から「フォルクスワーゲン・モータースポーツ?」として、ノルウェー人のアンドレアス・ミケルセン選手「ポロR WRC」で出走する。ヨースト・カピート (フォルクスワーゲン モータースポーツ ディレクター)「グラベルラリーの初戦で勝つことができるとは、正直予想していませんでした。もちろん勝利のため入念な準備をしているわけですが、この勝利はチーム全員が一丸となって完璧に戦ったからこその結果だと思っています。もちろん、ここにいる人たちだけでなく、ハノーバーやヴォルフスブルグのメンバー全員も含めてです。そして、今回の結果でセバスチャン・オジェの能力の高さが証明されました。我々は今後も勝利に向かって挑戦していきます。本当によくやってくれたと思います。また、ヤリ‐マティ・ラトバラは不運な結果でしたが、その後も諦めず走り続けたことでポイントを得ることができました。これもまた尊敬に値すると思います」セバスチャン・オジェ (総合優勝)「まるで夢のような気持ちです。ポロ R WRC は完璧に走ってくれました。最高のマシンを作ってくれたチームの皆に感謝しています。今夜は盛大にお祝いしたいですね。グラベルラリーのデビュー戦で勝利を飾ることができたことは、最高の想い出になりました。ドライバーズ選手権では、現時点で非常に大きな得点差を築いていますが、今年はまだ 10 戦も残っています。気を引き締めて残りのラリーも戦っていきたいと思います」ヤリ‐マティ・ラトバラ (総合16位)「金曜日の走行が始まってすぐにサスペンションを壊してしまい、非常に残念に思います。再出走してからは運転の方法や車両のセットアップを変えて色々と試してみましたが、ラリー終盤になって自分とポロ R WRC が噛み合ったような感触を受けました。操作性について、今は手に取るように理解できます。このことは次戦のポルトガルに向けて大きな自信となりました。パワーステージでポイントを獲得できたこともその一助になっています」
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