トヨタは、ブラジルのインテルラゴス・サーキットで開催されたFIA世界耐久選手権(WEC)第5戦サンパウロ6時間レースにおいて、出場3戦目にもかかわらず、スタートからゴールまでトップを譲ることなく力強い走りを見せ、見事に初勝利をあげた。 アレックス・ブルツとニコラス・ラピエールのドライバーにより、ポールポジションからスタートを切ったTS030 HYBRIDは、これまでの全てのレースで首位を走行しており、今レースもこの記録を伸ばした。
この勝利は、トヨタにとって1999年のWRC(世界ラリー選手権)チャイナラリー以来13年ぶりのFIA公認世界選手権での勝利であり、耐久レースとしては1992年にTS010で勝利をあげたモンツァのレース以来、実に20年ぶりとなる。 今日の勝利はトヨタの誇るトヨタハイブリッドシステム・レーシング(THS-R)にとっての一里塚と言える。レース用ハイブリッドシステムの開発は、現在トヨタ・レーシングでハイブリッドプロジェクトのリーダーを務める村田久武の指揮の下で2006年に開始された。 レース用ハイブリッドシステム開発プロジェクトは、2007年7月にトヨタ スープラHV-Rで十勝24時間レースを制したことで歴史の1頁を刻んだ。この先駆的なスーパーキャパシタ技術はその後も開発が続けられ、重量の軽減、出力の向上を主眼にTS030 HYBRID用の独創的なパワートレインへと引き継がれて来た。 インテルラゴスでの決勝レースは、ニコラス・ラピエールがスターティングドライバーでローリングスタートが切られ、第1コーナーでリードを奪った。そして、その後も混雑するコースを巧みに走り抜け、90分後にレースをリードしたままアレックス・ブルツにステアリングを託した。 アレックス・ブルツが燃料補給にストップした直後、コースにセーフティカーが導入されたおかげでTS030 HYBRIDはリードを40秒以上に広げることが出来た。 レースの再スタートが切られると、アレックス・ブルツは猛烈なペースで周回を重ね、レースが残り2時間半となった時点で2位に1分以上のリードを保って、再びニコラス・ラピエールとドライバー交替。 この日最速の1台であったTS030 HYBRIDは、最後の1時間を迎え、ニコラス・ラピエールからアレックス・ブルツへとドライバーチェンジ。ゴールまで数分を残したところで燃料補給のためにクイックピットストップを行ったが、再びトップでレースに戻り、2位に1分以上の差を付けて初優勝を飾った。 トヨタ・レーシングの次のレースは9月29日(土)に決勝レースが行われるWEC第6戦バーレーン6時間レース。アレックス・ブルツとニコラス・ラピエールが再びステアリングを握る。 アレックス・ブルツ: トヨタ・レーシングのドライバーであることをこんなに誇りに思ったことはない。トヨタはこの驚異的なハイブリッドシステムを開発し、その力を見せることが出来たと思っている。我々のトヨタハイブリッドシステム・レーシングは文句なしのパフォーマンスを示した。インテルラゴス・サーキットは特別好きなコースで、ここでトヨタ・レーシングの一員として勝てたことは最高の気分だ。チーム全員、チームメイトのニコラス・ラピエールに感謝したい。もちろん簡単なレースではなかった。我々はとにかく猛烈にプッシュした。勝利のキーポイントはタイヤのマネージメントで、第2スティントでその成果を発揮出来た。ミシュランタイヤにも感謝したい。ル・マン24時間レースで木下チーム代表が言ったことを覚えている。彼はこう言った。「見ていてくれ、やってみせる」。これから先のレースもこの気持ちを忘れないでいく。 ニコラス・ラピエール: チーム全員にとって格別の勝利だ。最初から我々のTS030 HYBRIDは速いと分かっていた。ル・マンでリードしたあとは、信頼性向上に務めた。シルバーストンで2位に入ったあとは燃費向上を目指した。そして、今日はそれらを成し遂げた。このプロジェクトの始まりからチーム全員が素晴らしい仕事をして来たが、今週末も例外ではなかった。アレックス・ブルツは予選で最高の仕事をしてポールポジションを獲得、レース中、我々はタイヤのマネージメントを上手くこなした。ハンドリングは素晴らしく、トヨタハイブリッドシステム・レーシングは強烈なパフォーマンスを提供してくれた。とにかく最高だった! 木下美明 トヨタ・レーシング チーム代表: 今日はトヨタ・レーシングにとって最高の日になった。表彰台の中央に立つことは我々の夢だったが、参戦3戦目にして早くもその夢が叶った。今日のレースは6時間レースというより、今年の1月に始まり9月までかかった長期戦であり、9ヶ月かけてやっと表彰台の真ん中に立つことが出来た。このプロジェクトに携わった全員に感謝したい。これまでこなしてきたハードワークが今日の勝利で報われた。我々がこれまで10年以上にわたって偉大な仕事を成し遂げて来たアウディを打ち負かすのは非常に困難な仕事だった。それゆえ、今日の勝利はトヨタ・レーシングにとって素晴らしい成績と言うだけでなく、FIAの新しい世界耐久選手権(WEC)が非常にエキサイティングなレースであることを証明出来た。次のレースでアウディが巻き返しを図ってくることは承知している。我々には彼らとフェアで素晴らしい接戦を繰り広げる準備が出来ている。 村田久武 トヨタ・レーシング ハイブリッドプロジェクトリーダー: レース用ハイブリッドシステムの開発は2006年に始まったが、当時は全く不可能なことのように思えた。しかし、モータースポーツ部の仲間、トヨタ自動車本社のハイブリッド部門、TMG、そしてオレカの協力で、夢を叶えることが出来た。今日、ハイブリッドシステムは最高のパフォーマンスを示し、300馬力のブーストがラップタイムをどれだけ向上させるか証明して見せた。油圧ブレーキと回生システムは完璧な協調を見せた。我々はその技術を完成させることが出来たことを誇りに思っている。アウディのようなタフで経験豊かなライバルをハイブリッドシステムのような先進技術で打ち負かすことは、開発に携わった全員にとってとても名誉なことだ。 パスカル・バセロン テクニカルディレクター: 今日ここで我々が成し遂げたことは本当に素晴らしいことだ。トヨタ車が最初にゴールラインを超えるのを見るのは非常にエモーショナルな瞬間だった。ここインテルラゴス・サーキットに来ているスタッフ、ケルンのTMGにいるスタッフ、それに日本の仲間達の力があって初めて成し遂げられた。彼らの働きこそがこの勝利に値する。レースは計画通り進んだ。シルバーストンと比べて燃費を向上できたおかげで、比...