160台以上の市販車をベースとしたレーシングカーが過酷な戦いに挑む、ニュルブルクリンク24時間レース(以下ニュル24時間)が開幕。5月25日にフリー走行、予選1回目が行なわれた。11回目を迎えるニュル24時間の挑戦だが、2007年に初参戦した際のテーマ「人を鍛え、クルマを鍛える」という原点に立ち返り、LEXUS RCの1台で参戦。3年目の挑戦となるLEXUS RCは、昨年のリタイヤの反省を活かしフルモデルチェンジと言っていいほどの改良が施された。
これまで、3月25日のVLN1、4月22-23日のQFレースに参戦。どちらも大きなトラブルもなく順調にミッションをクリアしてきたが、本戦に向けてドライバーからフィードバックされた「サスペンション周りの干渉」や「アンダーステア傾向」、「立ち上がり時のエンジンのパワー不足」という課題に対し、サスペンション周りの問題はパーツを新規で製作、パワー不足はエンジン制御を変更し、ニュルブルクリンク24時間レースへと臨んだ。今年のニュルブルクリンクは珍しく晴天となり、気温は19度と暖かい陽気の中フリー走行が行なわれた。スタートは30分ディレイして16時15分からとなったが、4人のドライバーは、車両チェックや燃費計測、エンジン制御ソフトの変更などのテストメニューを消化するためにピットイン-アウトを繰り返しながらの走行を行なった。1つのピットを6チームで共用するため、非常に狭いスペースの中での作業となるが、メカニックの動きもいい。LEXUS RCが参戦するSP3Tは激戦区のクラスの1つで、3連覇を目指すスバルWRX STI以外に、スバルの連勝を阻む「アウディTTRS2」、ニュルブルクリンクで開発を進めるヒュンダイの高性能ブランド第1弾となる「i30N」、などを含めた12台がエントリーしている。また、総合優勝を狙えるGT3車両が戦うSP9クラスにはアウディ R8 LMSやBMW M6 GT3、メルセデス AMG GT3などのスーパースポーツや、SP3クラスには昨年LEXUS RCのドライバーであった木下隆之選手が、TOYOTA GAZOO Racing Team Thailandから、カローラアルティスで参戦している。予選1回目は20分ディレイして20時25分から23時30分の2時間55分に短縮。4人のドライバーはまず決勝でドライブするための権利となる2LAP計測をこなす。ニュルブルクリンクでは20時台はまだ明るいが、徐々に日が落ちてナイトセッションへと変わる。すっかり日が暮れた21時30分ごろ、松井孝允選手のドライブ中に「エンジンパワーがない」と言う無線連絡と共に緊急ピットイン。吸気系のトラブルで修復作業を実施。これまで「何もないことが怖いくらい」と順調だった中の突然のトラブルに、改めて気を引き締めるきっかけにもなった。 修理で約30分のロスタイムとなったが、ピットアウト後のマシンは問題なく走行を続けた。気温が下がり、タイミングを見計らって新品タイヤに交換し井口卓人選手がタイムアタックを行ない、9分10秒902を記録。クラストップのスバルWRX STIの1.465秒差のクラス2位を記録した。予選1回目の結果を元にマシンチェックを行ない、5月26日の9時30分から行なわれる予選2回目に挑む。予選2回目に向けては更にエンジン制御の作りこみとセットアップ調整を行なう。矢吹 久選手 (トヨタ自動車社員)今回初めてLEXUS RCに乗りましたが凄い進化を感じました。コーナリング性能はもちろん、ニュルブルクリンクのコースでもクルマが凄く安定しているので、いいクルマにしっかりと育っています。自分は普段はレーシングドライバーのように速く走るのではなく、このようなクルマの知見やノウハウを次のモデルにフィードバックする業務をしていますが、このマシンのエッセンスを今後出てくるクルマに盛り込み、レーシングスピードでも安心して走れるようなモデルに仕上げたいですね。茶谷 圭祐 車両エンジニア(トヨタ自動車社員)エンジニアはほとんどが今年からのメンバーで、シェイクダウンまでにまずは個々の部品の作り込みをしてきました。シェイクダウンも含めて国内テストでは不具合が多発しましたが、それらを国内テストで出し切って対策したことでニュルブルクリンクに持ってきた車はトラブルフリーでした。しかし、今回の予選1回目でトラブルが起きてしまいましたが、常に走らせるということを優先させたことで、復帰と原因究明が早くでき、予選を続けられました。逆を言えば、決勝前に壊れてよかったと思います。その後のアタックで予選2位を獲得できたのは、これまで我々のやってきた活動が正しかったことを証明できたと思っています。