6月12日(水)、FIA世界耐久選手権(WEC)第4戦となる第92回ル・マン24時間レースの練習走行に予選と公式なセッションが開始された。この日、TOYOTA GAZOO Racing(TGR)の2台のGR010 HYBRIDは、予選で苦戦を強いられ、ハイパーポール進出を逃すこととなった。
昨年のWEC世界チャンピオンチームであるTGRは、23台のハイパーカーによる接近戦となった予選で、2台共にハイパーポールへの進出を逃すという厳しい結果となったが、今週末の決勝レースに向けて、力強いパフォーマンスを発揮し挽回を図るべく、チームの士気は高まっている。セバスチャン・ブエミ、ブレンドン・ハートレー、平川亮のGR010 HYBRID 8号車にとって厳しい予選となった。ハートレーがアタックするも、セッションを通して終始コース上のトラフィック(車両の混雑)に苦しみ、ハイパーカークラスのトップドライバーであるハートレーでも、その真のパフォーマンスを発揮することができなかった。結果、8号車は11番手グリッドからのスタートとなる。小林可夢偉、ホセ・マリア・ロペス、ニック・デ・フリースのGR010 HYBRID 7号車は、小林が予選アタックを担当。小林は4番手と好タイムをマークしたが、セッション終盤にコースオフを喫し、赤旗中断の原因となったとして全周回のラップタイムが抹消され、7号車はハイパーカークラス最後尾グリッドとなることが決定した。予選の前後には、2回の練習走行が実施された。23台で争われるハイパーカーの本当の実力が明らかになるのは決勝レースであり、チームはこの2回の練習走行でどちらもトップタイムをマークし、決勝へ向けた準備を着実に進めた。9日(日)のテストデーのあと、チームは2台のGR010 HYBRIDを組み立て直し、更なる調整を行うための作業に集中した。11日(火)には恒例のピットストップチャレンジにピットクルーが出場。昨年の同大会で優勝している7号車のピットクルーは、10秒以内でタイヤ交換を行う迅速な作業を見せたが、更なる速さを見せたライバルに僅差で及ばず、2連覇は叶わなかった。12日(水)は曇り空の下、過ごしやすいコンディションで午後2時から3時間にわたる練習走行1回目が開始された。このセッションは2度の短い赤旗中断に見舞われたものの、2台のGR010 HYBRIDは決勝レースを見据えたセットアップの最適化と、予選のための1周アタックへ向けた準備を進めた。このセッションでは8号車のハートレーがトップタイムをマーク。7号車はデ・フリースのタイムで5番手となった。午後7時からの予選では、各クラスの上位8台が翌日のハイパーポールへの進出権を獲得することになる。1時間のこの予選セッションでは、LMP2クラスやLMGT3クラスの車両を含む62台もの車両が一斉にアタックするため、コース上のトラフィックをいかに避けるかが大きなポイントだった。7号車は小林、8号車はハートレーがステアリングを握り、他の車両よりもやや遅れて、ソフトタイヤでコースイン。小林はトラフィックに遭遇することなくアタックでき、その時点での暫定トップに立った。タイヤが最適な温度まで上昇し、各車はさらにラップタイムを更新。20分を経過した時点で、小林の7号車が3番手、ハートレーの8号車は他車に押し出される形でトップ8圏外へと後退した。ピットインしたあと、ミディアムタイヤへと交換し、アタックを継続。ハートレーは再びアタックラップ中に遅い車両に引っかかり、小林もタイム更新はならず。残り20分を切ったところで、小林の7号車は3番手、ハートレーの8号車は12番手で、新品のミディアムタイヤへと履き替え、最後のアタックに向かった。最後までコース上のトラフィックに苦しんだハートレーは、スティントの序盤でスピンし、タイム更新ならず。小林は更なるタイムアップを目指しアタックしたが、カーティングコーナーで痛恨のスピンを喫し、コースアウト。幸いにどこにも接触はしなかった、グラベル上で止まってしまい、再発進できず。これにより赤旗が出され、残り時間が3分を切っていたため、予選セッションはここで終了となった。7号車は赤旗の原因を作ったとして、全てのラップタイムが抹消。8号車は11番手。8番手とは0.301秒差で惜しくもハイパーポール進出を逃すこととなった。夏至に近いこの時期、ル・マンの位置する地方では、日没は午後10時近くになる。日が落ちた午後10時、練習走行2回目として、このイベント初となる夜間走行が実施された。7号車は予選中のアクシデントにより、軽微な修復と砂利の除去などでセッション開始から25分ほどしてから走行を開始。このセッションでは昼間の1回目よりも全体的にラップタイムは低下したが、8号車はブエミがこのセッションのトップタイムをマーク。7号車はデ・フリースのタイムで9番手となった。決勝レースへ向けた準備作業は13日(木)も継続され、合計4時間にわたる2回の練習走行を経て、15日(土)の決勝レーススタートを迎える。コース上で熱い走行が繰り広げられる一方、サーキット内にはTGRのファンの皆様へ向けたアクティビティがオープン。水素ビレッジにはGR H2レーシングコンセプトをはじめとする水素社会へ向けた最新技術が展示され、マニュファクチャラーズビレッジでは様々なモータースポーツ車両やグッズショップなどが設置され、早くも注目を浴びている。小林可夢偉(チーム代表 兼 7号車 ドライバー)予選は上手く行きませんでした。パフォーマンスという面ではとても良かったのですが、残り2分というところで私がコースオフを喫し、赤旗中断となってしまいました。全周回のラップタイムが抹消されたことで、ハイパーポール進出は叶わず、ハイパーカークラスの最後尾グリッドからのスタートとなり、非常に厳しい状況ではありますが、仕方ありません。決勝レースは長いですし、最善を尽くします。クルマにはとても満足していますし、予選でのラップタイムも競争力があるものだったので、週末は良い結果が出せることを期待しています。ホセ・マリア・ロペス(7号車 ドライバー)浮き沈みの激しい一日でしたが、練習走行では幾つか良い手応えも得られました。クルマの感触はとても良く、特に夜間走行で快調です。我々のGR010 HYBRIDは予選でも速く、可夢偉が素晴らしい走りを見せてくれましたが、残念な結果になってしまいました。とは言え、正直なところそんなに大きな影響はありません。誰もがハイパーポールを目指していま...
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