トヨタF1チームで代表を務めた山科忠は、トヨタは「エリート主義」のF1に復帰する意向はないと述べた。山科忠は、トヨタの新たな優先事項は、アメリカのNASCARやドイツのニュルブルクリンク24時間レースのようなファンとの触れ合える草の根的なレースだと語る。昨年トヨタはF1から撤退したが、山科は昨年6月に豊田章男が社長に就任したときにトヨタの考え方に変化がもたらされたと語る。
当時、70年間で最悪の財政危機だったこともあり、トヨタはコスト削減のためF1プログラムを断念した。今年のニュルブルクリンク24時間レースを観戦した山科は、財政危機はすでに進んでいたF1撤退への決定を早めにすぎなかったと述べた。「あれほど突然ではなかったかもしれませんが、いずれそうなっていたでしょう」「豊田社長のモータースポーツへのスタンスは、より顧客に向けたものになっています。F1と実際のトヨタ車ユーザーとの間には大きな隔たりがあります」F1は自動車レースの頂点もままであるが、そのイメージはあまりにも「エリート主義」になったと山科は語る。山科は、ニュルブルクリンクなどのレースでは、ファンがピットレーンに入ってチームと交流し、クルマに触ることができ、雰囲気を楽しみ、イベントの一員だと感じることができるが、F1レースの平均的ファンはパドックを歩くこともできないと語る。「そのようなことをする余裕がある幸運な一部のファンにとっては、十分かもしれません。私は、最高のレースとは、人々がレースに親近感を持てるものだと思っています」山科忠は、昨年11月のトヨタF1撤退会見で涙を流した。豊田社長自身、F1撤退には人員削減が含まれていたため、社長として苦渋の決断のひとつだったと述べていた。