ホンダがF1撤退の理由として挙げたことでモータースポーツにとってネガティブなイメージがついた“カーボンニュートラル”。だが、同じ自動車メーカーであるトヨタは、水素エンジンでレースに参戦することでそのイメージを変えようとしている。ホンダは、F1に費やしていたリソースを『2050年までにカーボンニュートラルを実現』することに転換するために2021年シーズン限りでF1から撤退することを発表。モータースポーツ界で“カーボンニュートラル”という言葉が頻繁にヘッドラインとなった。
カーボンニュートラルとは、完全にゼロにすることが難しいCO2排出を減らすことに加え、排出せざるを得なかった分を“吸収”もしくは“除去”することで“ニュートラル(中立)”=差し引きゼロの状態にして、地球温暖化を抑える取り組みだ。だが、多くの企業が主に製造やリサイクルなどでカーボンニュートラルに取り組んでいるが、日本のテレビ局は“脱炭素社会”という言葉でその取り組みを伝えており、なかなか浸透していなかった。しかし、ホンダがF1撤退の理由としてカーボンニュートラルを挙げたことで、自動車、特にモータースポーツについてネガティブなイメージがついてしまった感は否めない。また、自動車メーカーは電気自動車によってCO2排出ゼロを目指そうという動きに出ているが、トヨタはあえて水素エンジンを提案している。トヨタの豊田章男社長は「カーボンニュートラルを実現するための選択肢として電気自動車しかなければ、日本では100万人の雇用が失われてしまう」とカーボンニュートラルの選択肢を増やしてほしいと訴え続けている。そして、トヨタは水素エンジンで『スーパー耐久(S耐)シリーズ2021 第3戦 富士24時間レース』に参戦し、モータースポーツの場で実証実験してみせた。トヨタはあくまで“エンジン”を残そうとしている。水素エンジン車は、ガソリンの代わりに水素をタンクに貯め、それをエンジンで燃やしてエネルギーを取りだして走る。水素を燃やしたときに出てくるのは、基本的には「水」だけ。二酸化炭素は“ほぼ”排出しない。水素エンジンを搭載したカローラで実際にレースに出場した豊田章男社長は「運転した感覚は、ガソリン車とまったく変わらない」と語る。トヨタで水素プロジェクトを指揮するGazoo Racingカンパニープレジデントの佐藤恒治は「今まであったエンジンをそのまま使いながら、燃料をカーボンニュートラルなものに変えられる」と語る。「ということは、最初にガソリン車として出しておいて、後々、水素に置き換えていくということだってできるかもしれません。クルマのつくりかたが変わっていく、そういう未来の扉を、いま開けようとしています」


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