トヨタF1チームのシャシー部門シニア・ゼネラル・マネージャーであるパスカル・バセロンが、2009年F1第3戦 中国GPで必要となるセッティングなどを語った。タイヤの特性がクルマのパフォーマンスに大きく影響するのはなぜなのかを説明してもらえますか?タイヤがクルマのパフォーマンスに大きな影響を及ぼすのはクルマが地面と接する唯一の部分がタイヤだからだ。クルマを速く走らせるには、しっかりと加速させる必要があり、その際に生じる力はタイヤを通じて路面に伝わる。クルマにはどんなものを搭載しても構わないが、もしもタイヤ...
複数メーカーによるタイヤの開発競争がある状況と比べて、1つのメーカーがタイヤを独占供給している場合、克服すべき課題に何か違いがあるのでしょうか?それ程遠くない昔、複数のタイヤメーカーによる開発競争があった当時は、タイヤがクルマのパフォーマンスに影響を及ぼす最大の要因で、その次が空力だった。現在はブリヂストンがタイヤを独占供給しており、従ってもはやタイヤを新たに開発することはない。必要なのはとにかく今あるタイヤをしっかりと使いこなすことだ。その作業は簡単だとは思わないが、開発することに比べれば一段階、楽になっている。今の状況では、パフォーマンスに関する要素の優先度が変わり、最も重要なのは空力で、タイヤの扱い方は2番目になった。タイヤ性能が常に同じで、その扱い方を学ぶ時間もあるため、全てが以前より楽になった。タイヤを開発している当時のように、常に新しい知識をどんどん身に付けていく必要もなくなった。現在は仕様が決まっているタイヤを使っているが、それでも各コンパウンドの特性を学ぶことは非常に重要だ。ただしそういったタイヤ特性を理解する作業はかなり楽になっている。タイヤを最善の形で使いこなすには、クルマにどんな特性が求められるのでしょう?オーバーヒートさせることなく十分なグリップを引き出すには、適切な作動温度の幅の中でタイヤを使わなければならない。温度が低すぎるタイヤはグリップしてくれないし、温度が高すぎると短時間で性能が低下し、パフォーマンスが落ちてしまう。また、タイヤは物理的な限界を超えない範囲で扱い続けなければならない。タイヤのコンパウンドが破壊されてしまうような過大な負荷をかけてはいけないんだ。従って、タイヤをこういったパフォーマンスの幅の中で使い続けられるよう、常にクルマのセットアップを調整していくことになる。タイヤからできる限り最高の性能を引き出せるようにね。今シーズンはタイヤのマネージメントが更に難しくなっているのでしょうか?昨シーズンよりも今年はタイヤのマネージメントが難しくなっているね。その理由は単純にタイヤが新しくなったこと、そして、今の我々が再び学習段階にあることだ。このため我々は、レースの度に各コンパウンドの特性の新たな一面に気付くことになる。たとえばセパンでは新しいハードタイヤを使用したが、テストではこのタイヤを一度も経験していなかった。このタイヤの特性を学ぶ時間はフリー走行しかなかったんだ。冬の間に他の3種類のコンパウンドはテストしているので、それらについてはもっとよくわかっている。ただし昨年までのように、過去のシーズンのレースで得たデータはない。このためセットアップ作業は以前よりやや難しいものになっている。また、溝付きタイヤからスリックタイヤに変わったが、スリックタイヤは摩耗や温度に関して、溝尽きタイヤと反応の仕方が異なる。全体的に言ってこの作業は困難を伴うものの、同時に非常に興味深くもある。各レースで使用するコンパウンドの特性の違いが以前より更に広がりましたが、このせいでレース戦略が更に難しくなっていますか?今年、ブリヂストンは、硬さと作動温度の幅に関して、大きく異なるコンパウンドを各レースに持ち込んでいる。昨年の場合、たとえばマレーシアでは、ミディアムとハードコンパウンドを使用したが、今シーズンはソフトとハードだった。これはタイヤのマネージメントを更に難しくするのが狙いで、実際にそうなる可能性は大いにある。特にメルボルンでは、ご覧の通り、タイヤの性能変化に関してかなり注意が必要だった。メルボルンでは特にそれが目立っていたね。メルボルンでそれが顕著で、マレーシアではそれほどでもなかったのはなぜでしょう?メルボルンの場合、2種類のコンパウンドのどちらともコース特性とコース状況にぴったり合っていなかったんだ。メルボルンではスーパーソフトは柔らかすぎで、ミディアムタイヤは硬すぎるという状況だった。このため理想的な作動温度の幅の中でタイヤを使いこなすのが難しかった。だがセパンでは全く状況が違った。と言うのも、どちらのコンパウンドも適切な作動温度の幅に収まっていたからね。このためタイヤのマネージメントは(メルボルンと比べて)かなり簡単だったよ。開催日程:2009年 F1 中国GP
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