トロロッソ・ホンダの両ドライバーでF1ドイツGPの結果は分かれたものの、ピエール・ガスリーも、ブレンドン・ハートレーも雨によって予想が難しい状況の中で積極的にチャレンジした戦いだった。過酷だった3連戦を終え、1週間のインターバルを経て迎えたドイツGPの舞台は、高速コースとして知られるホッケンハイム・リンク。大幅なコース改修が施され、現在は森の中を駆け抜ける超ロングストレートこそ姿を消したが、全開率が比較的高いパワーサーキットであることに変わりはない。
「かつてホッケンハイムは、エンジンサプライヤーにとって最も難しいレースの一つでした。その理由は高いスロットル全開率にあり、ドライバーは森の中を走る2本のロングストレートをフルスロットルで駆け抜けていました。2001年の改修によりロングストレート自体はなくなりましたが、未だにカレンダーの中では6番目にパワー感度が高いトラックであり、燃費についても厳しいサーキットの一つです」とホンダF1 テクニカルディレクターの田辺豊治は語る。田辺豊治にとっても第2期時代の思い出が多く残るコースだった。1週間の休みが、わずかながらリフレッシュしたムードをチームに漂わせ、シーズン前半を締めくくるこのドイツ、ハンガリーの連戦に臨む意気込みが感じられた。しかし、パッケージとしてのマシンの状態は1週間のインターバルでは変えられなかった。初日、トラブルやアクシデントはなかったものの、マシンのセッティングがなかなか決まらず、ドライバーはグリップ不足を訴えていた。ピエール・ガスリー、ブレンドン・ハートレーともに徐々にタイムを伸ばしていくものの、ポジションを大きく上げることはできず、順位は下位に終わる。2日目は、雨のためにP3をほとんど走れずに終わり、前日からの改善点を確認できないまま、ぶっつけで予選に挑まなければならなくなってしまった。ドライコンディションに回復した予選では、路面がグリップに関して難しい状況を生み出し、ガスリー、ハートレーともにわずかな差でQ2進出を逃すこととなった。チームは予選17番手となったガスリーのマシンのパワーユニット交換を決める。パワーユニットのストックを作り、今後の使い方に幅を持たせようとする戦略的な交換で、ペナルティーのダメージが少ないこの機会に行う判断だった。これにより、ガスリーは最後尾からのスタートとなった。流れはあまりよくないまま迎えた決勝レースであったが、レース中盤を過ぎたころに降り始めた雨が、トロロッソ・ホンダの状況を変えていったと言えるかもしれない。序盤、下位を走行していた2台だが、降雨が明らかとなり始めた段階で、ガスリーは通常のタイヤ交換を引き伸ばし、雨を待った。レーダーでの予想では、まもなく、しかも強い雨が降るタイミングだった。誰よりも1セット目のタイヤで走り続けたガスリーもペースが落ち、後続にパスされ続け、そろそろ限界かと思われたとき、雨は空から落ちてきた。浅溝のインターミディエイトに替えるマシンがで始めたころ、ガスリーもピットイン。チームはより雨が強くなることに賭けて、ウエットタイヤを選択した。ただ、残念ながらこの賭けに勝つことはできず、雨は収まりかけ、ガスリーは3周でオーバーヒートしたタイヤを交換せざるを得なかった。ハートレーは、この雨に対してミディアムタイヤでコースにとどまることを選んだ。難しいコンディションを乗りきったハートレーは、その後のセーフティカー導入という絶妙なタイミングでタイヤ交換を行ない、セーフティカーが解除されると9番手のポジションを走行。終盤、2台にパスされ11番手でフィニッシュしたものの、上位車のペナルティーで10位入賞を獲得した。結果は分かれたものの、ガスリーも、ハートレーも雨によって予想が難しい状況の中で積極的にチャレンジした戦いだった。「予測が難しい雨により波乱となったレースの中で、2台のマシンが完走できたことはよかったと思います。しかし、ここ数戦を見ると我々のパッケージにはまだ課題が多いと思っています。来週のハンガリーGPに向けて早急に現状分析を行い、パフォーマンス改善に努めます」と田辺豊治は語った。前半戦最後の戦いとなるハンガリーは、トロロッソもホンダも、比較的相性のいいサーキットであり、そこでマシンの速さを取り戻すために、チームは改善を進めている。
全文を読む