トロロッソ・ホンダは、2018年のF1世界選手権 第5戦 スペインGPで手応えを感じつつも、アンラッキーが重なり、思うような結果に結びつけることができなかった。第5戦スペインGP決勝、6列目12番手からスタートするピエール・ガスリーに、トロロッソ・ホンダのチーム全員の期待が集まっていた。入賞しポイント獲得が現実的なポジションであることはもちろんだが、ここ2戦での苦戦に対して解決の方向性を見い出し、その答えをレースで表してくれることをだれもが待ち望んでいた。
しかし、スタートしてわずか3つのコーナーを回っただけで、他車のスピンに巻き込まれピエール・ガスリーはストップ。スタート直後のリタイアという結末で幕を閉じた。ヨーロッパラウンドの始まりを告げる第5戦スペインGPは、シリーズ第2の開幕戦とも呼ばれ、マシンに大規模なアップデートを施し臨むチームも多い。しかし、トロロッソ・ホンダは、現状のマシンの理解を深める方針を進め、アップデートは持ち越した。これまでの4戦、好調だったバーレーンのあと、上海、バクーと低迷が続き、その原因解明と対策を最優先させた。パワーユニットについても「バクーのあとの分析によって、(スピード不足は)エネルギーマネジメントの運用に問題があったことが分かりました。その経験を活かして、スペインGPに臨みます」とホンダF1のテクニカルディレクターを務める田辺豊治は語った。エネルギーマネジメントの運用――つまり、モーターを作動させる電気エネルギーの消費と充電のバランスを適正化させることを意味し、ストレートの長いバクーでは消費に見合った回生による充電が十分ではなかったということである。これは、制御プログラムの問題と、ドライビングによる回生の不足とが考えられるが、問題解決はそう難しい話ではなかった。ピエール・ガスリーも「パワーユニットそのもののパフォーマンスの問題ではなく、どう使うかの問題だった。チームと僕たちドライバーとのコミュニケーション不足が原因で、それがクリアになって解決できたのはよかった」とコメントしている。スペインGP初日。プラクティス1ではピエール・ガスリーが順調な滑り出しを見せ10番手につけた。しかし、プラクティス2で少し歯車が狂い始めた。セッション中に、ガスリーがコースアウトしたためにフロアにダメージを負い、フロアの交換作業を余儀なくされる。ブレンドン・ハートレーもフロア修復を行い、2台ともピットでの作業に時間を要してしまった。これにより、アタックのシミュレーションのタイミングが遅れ、ほかの多くのクルマがロングランを行っているタイミングと重なり、クリアラップでのアタックができなくなってしまった。ピエール・ガスリーの14番手、ブレンドン・ハートレーの18番手というポジションは実力とは違う結果だった。2日目のフリープラクティス3では、前日の遅れを取り戻すべく、積極的にアタックシミュレーションを行った。ピエール・ガスリーは10番手を取り戻し、レースに向けたセッティングも大きく改善が見られた。しかし、ブレンドン・ハートレーがコースアウト後に大きなクラッシュを喫し、マシンは大破。ハートレーの予選出走は不可能となった。予選では速さを取り戻したピエール・ガスリーにQ3進出の期待がかかる。しかし、最後のアタックでわずかなタイムロスがあり、12番手に終わった。歯車はまだ噛み合っていなかったようだった。「昨夜見つけたバランスを向上させる方向性にピエールは好感触で、自信を持ってアタックできましたが、セクター2で少しアンダーステア傾向となり、コンマ数秒を失ってしまいました。それがなければQ3進出は可能だったと思います」とトロロッソののテクニカルディレクターを務めるジェームス・キーは語っている。予選終了後、チームが用意したサプライズが披露された。チームのスイーツ専門シェフの手作りのバースデーケーキが、代表のフランツ・トストからこの日、誕生日を迎えた田辺豊治に贈られたのである。トロロッソとホンダの結びつきの進化を表す象徴的な出来事だった。「中国、バクーでの2戦に比べ、パフォーマンスが戻ってきていることを感じています。速さを取り戻しているので、10位以内に入りポイントを獲得することは現実的な目標です」とピエール・ガスリーはレースに向けて好感触だった。しかし、ガスリーもチームも、マシンの復調を確認できないまま、スペインGPは終わってしまった。「2人のドライバーが、とても大きなアクシデントにもかかわらず無事だったことがなによりよかったです。レースですから、こういうこともある。マシンの復調は実感しているので、今後もさらにやるべきことを進めるだけです」と田辺豊治は語る。苦しい展開からマシンの復調に手応えを得られたものの、いくつかのアンラッキーで歯車が狂い、結果を残すことができなかったスペインGP。しかし、マシンのパフォーマンス、そしてホンダの連携を含めたチーム全体のパフォーマンスに着実な進化が感じられたグランプリでもあった。シリーズは序盤から中盤へ進み、トロロッソ・ホンダの進化への絶え間ないチャレンジは続く。
全文を読む