11月23(土)~24日(日)に、富士スピードウェイ(静岡県)でSUPER GT × DTM 特別交流戦が開催され、5台の2019年型NSX-GTが出走した。週末のスケジュールは、土曜日と日曜日の午前中に各レースの公式予選を、午後に決勝レースを一度ずつ行なうというもの。レースは55分間+1周で競われ、途中でピットストップを行ないタイヤ交換することが義務づけられたが、通常のシリーズ戦と違い、ドライバー交代はなく、一人のドライバーがスタートからフィニッシュまで走りきる。
タイヤはDTMで用いられるハンコックタイヤを全車が装着。ただし、DTMで使用されるDRS、プッシュトゥパスは今回禁止とされた。なお、週末を通じて空模様は変わりやすく、2日間ともに午前中は雨で、午後は次第に天候が回復していく難しいコンディションでレースが行なわれた。土曜日の公式予選では#1 RAYBRIG NSX-GT(山本尚貴)がHonda勢のトップとなる3番グリッドを獲得。#17 KEIHIN NSX-GT(塚越広大)が6番手でこれに続いた。午後2時30分過ぎにスタートが切られたときの天候は霧雨で、路面もうっすら湿った状況。このため大多数のチームはスリックタイヤを装着してレースに臨んだが、一部レインタイヤでスターティンググリッドに並ぶチームもあった。予選3番手のRAYBRIG NSX-GT(山本)はスタートして間もなく2番手にポジションを上げたが、コンディションにぴったりマッチしたセッティングを施したKEIHIN NSX-GT(塚越)がこれを猛追。レース前半にしてRAYBRIG NSX-GT(山本)を攻略して2番手に浮上する。レース終盤にはセーフティカーが導入され、通常のシリーズ戦とは異なるインディ方式のリスタートが行なわれたが、KEIHIN NSX-GT(塚越)とRAYBRIG NSX-GT(山本)はそれぞれのポジションを守ったままフィニッシュまで走りきり、KEIHIN NSX-GT(塚越)が2位、RAYBRIG NSX-GT(山本)が3位となってそれぞれ表彰台に上った。日曜日の公式予選では#16 MOTUL MUGEN NSX-GT(中嶋大祐)が予選トップタイムを記録したが、金曜のアクシデントにより車両を交換したことで、5グリッドダウンとなり、6番手からスタート。#64 Modulo Epson NSX-GT(ナレイン・カーティケヤン)は2番手、RAYBRIG NSX-GT(山本)は3番手、KEIHIN NSX-GT(塚越)が5番手からのスタートと、路面がやや湿ったコンディションの予選でHonda勢はいずれも好グリッドからのスタートとなった。ドライコンディションのもとスタートが切られた決勝レースでは、2周目の1コーナーでModulo Epson NSX-GT(カーティケヤン)がブレーキング競争を制してトップに浮上。3周目にはRAYBRIG NSX-GT(山本)が2番手、4周目にはMOTUL MUGEN NSX-GT(中嶋)が3番手、KEIHIN NSX-GT(塚越)が4番手となり、Honda勢がトップ4を独占した。しかし、レースは途中でセーフティカーが2度出動する波乱の展開となり、RAYBRIG NSX-GT(山本)はタイヤのパンクもあって一時は最後尾近くまで後退。26周目に起きた多重アクシデントではKEIHIN NSX-GT(塚越)と#8 ARTA NSX-GT(野尻智紀)がリタイアに追い込まれる。それでもModulo Epson NSX-GT(カーティケヤン)は粘り強く戦って優勝。一時は最後尾まで順位を落としたRAYBRIG NSX-GT(山本)も4位までばん回してレースを終えた。佐伯昌浩|株式会社本田技術研究所 Honda GT プロジェクトリーダー 「長い準備期間を経てこのレースの開催にこぎ着けた関係者の皆さんにまずは感謝したいと思います。今シーズンはなかなか本来の実力を発揮できませんでしたが、今回は2回の公式予選がいずれもNSX-GTが得意とするダンプ・コンディション(路面が少し濡れた状態)だったため、上位グリッドからスタートできました。このためレースで優位に立つことができ、これが好成績に結びついたと考えています。2020年シーズンには新型のマシンを投入するので、ミッドシップのNSX-GTで戦うレースは今回が最後となりますが、第2レースではModulo Epson NSX-GT(カーティケヤン)が優勝して有終の美を飾ることができました。今シーズンの雪辱を果たすべく、研究所とチームが一丸となってこれまで努力してきたので、この結果にはとても満足しています。新型マシンを導入する2020年シーズンも皆さんのご期待に応えられるように全力を尽くしますので、今後もご声援をどうぞよろしくお願いします」塚越広大(第1レース:2位、第2レース:リタイア)「予選では他のマシンといい間合いをとることができず、決して理想的な状態でアタックができたわけではありませんでしたが、それでも6番手といいグリッドが手に入りました。決勝に向けては、セッティングをどうするかで悩んだものの、結果的にはドライとウエットの中間的な仕様を選び、レース前半で2番手までポジションを上げることができました。最終的に2位となって表彰台に上り、(DTMを主催するITR代表の)ゲルハルト・ベルガーさんからトロフィーを頂戴できたので、F1時代のベルガーさんに憧れていた僕にとってはとてもうれしい結果となりました」山本尚貴(第1レース:3位、第2レース:4位)「金曜日までマシンの感触はあまりよくなかったので、土曜日のレースで3位表彰台を獲得できて満足しています。第2レースでも、チームのエンジニアがトップグループで戦えるマシンを用意してくれたので、最後尾から4位まで追い上げることができました。第2レースでは一時トップ4を独占してNSX-GTの速さを証明できましたし、日本のエンジニアやドライバーのレベルが高いこともこれで明らかになったと思います。DTMとの交流戦に関してはまだ課題も残っていますが、こうしてすばらしい第一歩を踏み出すことができたので、これが無駄にならないよう、今後も関係者の皆さんとともに努力したいと考えています」ナレイン・カーティケヤン(第1レース:出走せず、第2レース:優勝)「Modulo Epson NSX-GTは木曜日に走り始めた当初から感触がよく、好成績を収められる手応えをつかみました。しかも、どんなコンディションでも速く、結果として第2レースで優勝できました。DTMに参戦するすばらしいドライバーたちと戦って優勝できたのですから、まるで夢がかなったような思いです。チームのエンジニアたちがハンコックタイヤにあわせたセッティングをまとめ上げてくれたことが勝因となりました。おかげで、Modulo Epson NSX-GTは走るたびに速くなり、決勝でも苦労することはありませんでした」
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