2022年 スーパーフォーミュラ選手権シリーズ第6戦が7月16日(土)~17日(日)、富士スピードウェイ(静岡県)で開催され、笹原右京(TEAM MUGEN)が初優勝を成し遂げた。朝からの降雨で土曜日のコースはウエットコンディション。この状況が考慮され、公式予選はノックアウト形式から30分間のタイムトライアル形式(計時予選)で行なわれた。
雨量によって路面コンディションが変転する中、#1 野尻智紀(TEAM MUGEN)が3番手、#6 大津弘樹(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が5番手、#5 牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が6番手のタイムを記録してスターティンググリッドが決まった。日曜日の天候は回復傾向で、朝のフリー走行こそ途中までダンプ(路面が湿った状態)だったが、午後の決勝レースがスタートする頃には雲のすき間から太陽も射して完全なドライ路面となった。午後2時30分すぎ、決勝レースがスタートすると、3番手からスタートした野尻は2番手の#38 坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)をかわし、ポールポジションスタートの#19 関口雄飛(carenex TEAM IMPUL)に続く2番手に進出した。3周目に発生したアクシデントを処理するためセーフティカー(SC)が導入された時点では、2番手に野尻、4番手に牧野、6番手に大津がつけ、7番手と8番手には、それぞれスタートで順位を上げた#64 山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)と#15 笹原右京(TEAM MUGEN)が続いていた。レースは10周目から再開された。その10周目を終えた段階で2番手の野尻、6番手の大津がタイヤ交換義務消化のためピットイン。12周目には牧野がこれに続く一方、笹原と激しく順位を争っていた山本がドライブスルーペナルティーを受けて後退したため、見かけ上の3番手にはタイヤ交換ピットインを遅らせる戦略を選んだ笹原が浮上していた。先頭を走る関口は25周目にピットインしてタイヤ交換を行ない、野尻の前でコースに復帰したが、復帰直後にリアタイヤが脱落して走行不能に陥り、結果的に野尻が関口をかわすことになった。ところが、この関口のアクシデントによって介入したSCランのタイミングで、それまでタイヤ交換を遅らせていた坪井がピットイン。そのまま坪井が野尻の前でコースに復帰した。笹原は坪井の次周にピットインし、タイヤ交換を行なった。このとき、野尻をかわしてトップに立ったと考えた坪井がSCに追いつくまでペースを下げていたため、笹原はSCと坪井のあいだに入る形でレース復帰に成功。結果的に坪井と野尻をかわして先頭に抜け出して、30周目から再開されたレースをリードすることとなった。一方3番手の野尻はレース再開とともに2番手の坪井に攻めかかったが順位を入れ替えることができず、タイヤ消耗が進んでいたこともあって逆に4番手の#37 宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM'S)から攻め寄られて防戦に入った。その後、笹原は坪井との間隔を少しずつ開きながら残りの周回を走りきり、優勝のチェッカーフラッグを受けた。2020年に他選手の代役としてスーパーフォーミュラにデビュー、昨年は牧野の代役を務めて2レースを戦った後、15戦目の初優勝だった。その後方、宮田の追撃を抑えきり3位でレースを終えた野尻は、選手権ポイントを93点へ伸ばし、ランキング2番手の#20 平川亮(carenex TEAM IMPUL)との得点差を29点へ開いて、8月20日~21日、モビリティリゾートもてぎで開催されるシリーズ第7戦・第8戦を迎えることとなった。笹原右京(TEAM MUGEN)「チームの皆さん、そして応援してくださっている皆さんに『本当にありがとうございます』というひと言、感謝の言葉しかありません。このラウンドまで、なかなか自分自身が結果を届けることができず、プレッシャーも大きかったです。そうした状況でも、とにかく『絶対にあきらめない』『前を追い続け、わずかなチャンスでもモノにするんだ』という思いで、チームとともにやってきました。昨日の予選も思ったようには行かなくて、本当に苦しかったのですが、チームの全員が支えてくれたおかげです。レースでは、自分が入ろうと思っていたときに、タイミングよくSCになりました。頭の中では『もしかしたらチャンスが来るかもしれない』と考えながらも、ミスをしないように集中して最後まで走り続けることができました」野尻智紀(TEAM MUGEN)「スタートで坪井選手をオーバーテイクできて、そこである程度流れを自分のほうに寄せられたとは思っていたのですが、そのあとにSCが入ったとき『今回は積極的な戦略で行こう』とミニマム(10周終了時点)でのピットインを選びました。その後、自分に流れが向かなかった展開の中でも、しっかりこの順位をキープできたことは非常にいいことだと思うので、また次につなげていきたいと思います。2回目のSCランの際、正直僕も坪井選手も、それぞれ“お互いのこと”しか考えていなかった局面だったと思っています。僕もあのSCランのとき、坪井選手にもう少し(ペースを上げて)前に行ってほしいというプレッシャーをかければ、坪井選手にも気付いてもらえたかもしれないので、自分も甘かったと反省しています。次のもてぎの2連戦が正念場だと思っているので、がんばりたいと思っています」